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2024年8月6日、韓国の仁川国際空港に到着したフィリピン人の家事労働者=東亜日報提供。9月からソウルの家庭で働く予定だ

 世界的にも異例の「超少子化」が進む韓国で9月から、外国人の家事労働者の受け入れが試験的な事業として始まる。フィリピンからすでに100人が韓国に入り、研修中だ。子育てと仕事を両立しやすくし、少子化対策につなげる狙いがあるという。

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 事業は韓国政府とソウル市が進めている。韓国入りしたフィリピン人の働き手は、子どもの世話や家事、韓国語などの研修を約4週間受けた後に9月3日から来年2月まで、ソウル市内の家庭で「家事管理士」として働く。

 韓国政府が労働者を送り出す国の政府と協定を結び、公的管理のもとで外国人の働き手を受け入れる「雇用許可制」に基づく在留資格を得ることになる。フィリピン政府公認の関連資格を持つ人材から選ばれた。

 ソウル市によると、12歳以下の子どもがいるなどの条件を満たす700以上の家庭から申し込みがあり、157の家庭への派遣が決まった。共稼ぎや子どもが複数いる家庭を優先したという。

 フィリピン人の家事労働者には最低賃金や雇用保険、健康保険などが適用される。1日4時間利用した場合には月額で費用が119万ウォン(約13万円)程度となる見込み。実際に利用出来るのは経済的に余裕がある家庭に限られるとの指摘が出ている。

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 韓国の超少子化は世界的にも異例の速さで進んでいる。昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数)は0・72と、日本(1・20)と比べても大幅に低い。

 その背景の一つとしては、長時間労働などによる子育てと仕事の両立の難しさが指摘されている。子育てのために仕事を辞める「経歴断絶」に直面する女性が少なくない。

 一方で家事労働を担う韓国人は減っており、50歳代以上が9割以上を占めるなど高齢化も進んでいる。フィリピンからの受け入れにはこうした背景がある。(ソウル=稲田清英)

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