Smiley face

 小学5年生のとき、文具店のシャーペンを盗んだところを取り押さえられた。

 「ピンク色のペンが欲しかったんや」

 警官に悪ぶったが、本当は学校で使うペンが欲しかった。

 店員が家に電話をかけても、誰も出ない。

 ふびんに思われたのか、その場で解放された。

 「ほんまにあほで、貧乏やった」

 大阪府の井ノ元豊さん(47)は大阪の歓楽街で生まれた。

写真・図版
10代のころの井ノ元さん=本人提供

 4人きょうだいの長男。自分を産んだとき、母は16歳だった。

 父はトラック運転手。小学高学年の時に、離婚した。

 スナックで働いた母の新しい恋人や客を頼って、2年余りで五つの小学校を転々とした。

 平日、口にするのは給食だけの日も。

 ある日、母は「また迎えにくる」と出かけた。 きょうだい全員で1週間、朝から晩まで駅で待った。

 そのまま帰ってこなかった。

 親族の家をたらい回しにされた後、父に引き取られた。

事故を起こし、社長は言った

 中学では「ばりばりのヤンキー」に。バイクの暴走行為に明け暮れた。

 中学卒業後、父と同じ食肉を運ぶ運送会社に入り、雑用やトラックの運転をした。

 だが、23歳で事故を起こし、免許が一時停止処分に。

 免許がない間だけと、グループの食肉加工会社に移った。

 そこで、人生が変わった。

 「運転しかできへん俺を雇っ…

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