インターネット上の言説
【支給された「通勤手当」の10%は自腹になる】石破「通勤手当に課税するぞーー!!」
(5月29日、Xの投稿をまとめたインターネットのサイト「Tweeter Breaking News ツイッ速!」)
「石破首相が新たに通勤手当に課税する」ネットで広がる
石破茂首相が新たに通勤手当に課税する方針を示したかのような言説は、5月下旬からSNSなどで広まった。
「石破『通勤手当に課税するぞーー!!』」と題したまとめサイトが紹介した投稿の一つは、「ほななにか、会社から電車代100円もらったら、10円もっていかれるんか。10円不足では電車に乗れんから自分で足す。仕事に行ったら罰金みたいなことですね。んなアホなことがあるかい」と批判する内容で、600万回超表示された。
このX投稿は、3月21日に「主に日本のニュースと日本人の反応をまとめたサイト」と称するサイトで公開された記事を引用。記事は「石破政権、通勤手当への課税について説明」との見出しで、3月18日の参議院予算委での質疑を紹介している。首相が新たに課税する方針とは書いていないが、SNSでは公開直後から、「石破政権 通勤手当への課税について説明『通勤手当の有無で差が出るのは公平ではないので課税します』」といった説明と共に批判が広がっていた。
3月18日の質疑では、確かに通勤手当は話題にのぼった。立憲民主党の村田享子氏は、通勤手当の扱いが財務、厚生労働両省間で異なる点を指摘。通勤手当はすでに一定額以上が課税対象になっているが、社会保険料は個々の「報酬」の額に応じて決まる仕組みで、通勤手当は「報酬」とみなされるため、通勤手当の額が高くなれば、年金、健康保険などで納める保険料も上がる。
通勤手当をもらっている人ともらっていない人で社会保険料が異なるのは不公平だとして、村田氏は「社会保険料の計算上、通勤手当を報酬から除くべきでは」と政府に質問した。
福岡資麿・厚労相は「多様な手当があるなかで通勤手当だけを除外することの正当性や公平性に課題がある」などと除外を否定した。
一方、加藤勝信・財務相は、エネルギー価格高騰を踏まえてマイカー通勤の非課税額の引き上げを問われ、人事院の調査を踏まえて対応する方針は示したが、通勤手当に新たに課税するとの答弁はしていない。
石破首相も3月28日の参院予算委で、通勤手当の扱いの違いについて、「どっちか決めろと言われても、なかなかそういうことにはならない。制度の沿革、税収、保険料収入を精査し、結論を得る努力をする」と説明。「感覚からすれば実費弁償。報酬って言われるとかなり感覚からすればぴったり来ないものがある」とも述べたが、この日の答弁も含めて、あらゆる国会審議の場で、新たな課税対象とするのが政権の方針だとは答弁していない。
通勤手当への課税をめぐっては、過去にも注目を浴びたことがある。首相の諮問機関である政府税制調査会が2023年6月にまとめた中期答申は、所得税が非課税になっている項目として通勤手当などを挙げ、「妥当であるか、必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」と提言。これがネット上などで「サラリーマン増税だ」との反発が起きた。
【判定結果=ミスリード(一見事実と異なってはいないが、重要な事実が欠落したり、 表現が誇張されたりしており、誤解を招く余地がある)】
まとめサイトのタイトルやそのサイトで紹介された投稿の一つは、政府が新たに通勤手当に課税する方針であるかのような内容だが、通勤手当はすでに一定額以上が課税対象になっており、誤解を招く余地がある。例えば、電車やバスは月15万円までが非課税で、多くの人は課税対象になっていない。マイカー通勤の場合、ガソリン代なども通勤の距離に応じた非課税額が定められている。