知人の離婚届の証人欄に旧姓で署名したところ、自治体の窓口から「こういう人はいない」と書き直しを依頼された。
このときに感じた複雑な心境を、今でもうまく表現するのが難しい。その場では「別に書き直すだけ」と応じたが、胸のあたりがざわざわとした。
奈良弁護士会所属の戸城杏奈さん(45)は、戸籍上は夫の姓だが、結婚前の姓で活動を続けている。いわゆる「マチベン(町の弁護士)」で、離婚調停や相続などといった民事手続きを中心に、あらゆる依頼に対応する。
戸城さんは、政府が選択的夫婦別姓制度の導入ではなく、結婚前の姓を「通称使用」できる範囲を広げようとしていることについて「問題のすり替え」と批判する。普段の弁護士活動の中でも、不便に感じるところがあるからだ。
取材に当たった記者も1年ほど、日常的に仕事や生活では旧姓を使っています。「通称使用でも不便は少ない」と感じましたが、戸城弁護士に取材をして気づいたことがありました。共感したことや、印象に残った言葉を記者の視点からつづっています。
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