健大高崎(群馬)の優勝で幕を閉じた春季関東地区高校野球大会。春の選抜を制し、昨秋から公式戦27連勝を続けていた横浜は準決勝で敗れ、東海大相模は準々決勝で涙をのんだ。両校は主力選手のけがや不調に悩まされながらも、夏に向けて経験を積んでいた。
横浜高校、主力欠くも今村選手ら躍動
横浜は攻守の要だった阿部葉太主将(3年)と、春の選抜大会でエースで4番を務めた奥村頼人選手(3年)が万全の状態で出場できないなか、主軸を担ったのが今村稀翠選手(3年)だ。
佐賀県出身。横浜に入学し、「これまでの振るだけのバッティングじゃ通用しない」と感じた。そこから、セーフティーバントや一塁に走り出しながら打つ「走り打ち」などの小技を磨き、「いやらしいバッティング」を追求してきた。
4番として出場した初戦の作新学院(栃木)戦では意表を突くセーフティーバントに成功し、味方の適時打で同点の本塁を踏んだ。
専大松戸(千葉)に敗れた準決勝では5番として出場し、初回に先制の2点適時三塁打、1点を追う七回には同点の左前適時打を放つなど、4安打3打点と気を吐いた。
しかし、1点を追う九回には得意のバントに失敗し併殺に倒れた。試合後は「勝負どころで気負ってしまい、いつも通り打席に立てなかった」と悔しさをにじませた。
関東大会では、選抜で体現した横浜伝統の「ノーヒットでも1点取れる緻密(ちみつ)な野球」に、ほころびが出ていた。
村田浩明監督は「たくさん試合をして成長できた半面、バントや盗塁の精度が落ちてきた」と振り返った。連戦で疲弊した選手のコンディションを整えるのに時間をかけ、思うように練習できなかったという。
投手陣では、池田聖摩投手(2年)の活躍が目立った。選抜大会では遊撃手として活躍し、登板の機会はなかった。エースが登板できない今大会、初戦の二回途中から救援し、5回3分の1を無失点に抑えた。
準決勝では、1年生の福井那留投手が先発した。今大会は継投で勝ち上がった選抜を上回る6投手が登板した。
村田監督は大会を通し、「連勝記録よりも夏の甲子園に戻ることを選択して、たくさんの選手を使った」と話す。「足りない点が明確になったので、この負けを糧に夏の神奈川大会に向けて準備したい」
東海大相模、エースの完全復活なるか
東海大相模は、右ひじのけがから復帰したエース福田拓翔投手(3年)が本調子でなかったことが響いた。
常総学院(茨城)との初戦では、12安打10得点と打線が爆発。先発の福田投手らも要所を押さえ、コールド勝ちを収めた。しかし、山梨学院(山梨)との準々決勝では、先発の福田投手が3回3分の2を投げ4失点とふるわず、打線も9安打を放ちながらあと1本が出なかった。
原俊介監督は試合後、福田投手を先発に起用した理由を「夏に向けて自分の現状を知ってほしかった」と話し、「今は本来のピッチングでない。それを上げていくのが僕の使命」と語った。
「打倒横浜」を掲げる東海大相模。昨夏の神奈川大会では決勝で横浜を下したが、昨秋と今春の県大会決勝では横浜に軍配が上がった。福田投手は「『横浜1強』などと言われて悔しい。夏は自分たちが横浜を倒す」と意気込む。
6月14日には夏の甲子園出場をかけた神奈川大会の組み合わせ抽選会がある。開会式は7月7日に横浜スタジアム(横浜市中区)で行われ、試合は9日から始まる。昨年は168チームが参加した激戦区・神奈川の頂点を目指し、各校は最後の追い込みをかけている。