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DK(ダイニングキッチン)スタイルのはしりとなった蓮根団地(東京都板橋区、1957年)の復元住居で。据え付けのテーブルとイスは目新しく、引っ越しで持ち出してしまう人もいたという=東京都北区、篠田英美撮影

 平地や高台に広がる、高度経済成長の象徴・団地。全国各地で高齢化が進む一方で、再整備の試みもある。「職業はドイツ人」として鋭い日本社会論を繰り出すマライ・メントラインさんと団地を訪れ、コミュニティーのあり方を考えた。

 「ドイツでも古い集合住宅の老朽化や住民の高齢化が深刻で、日本の現状にも関心が集まっています」。3月下旬、東京都北区のJR赤羽駅で待ち合わせたメントラインさんは言う。一昨年にドイツの住宅政策を担当する大臣が来日し、団地の再整備事業の現場を視察した際は、同行取材したという。

 駅から徒歩10分。高台を上ると、10階建て前後の細長い集合住宅が立ち並ぶ。2000年から昨年まで建て替えを行った旧赤羽台団地。現在は「ヌーヴェル赤羽台」として名前を改めた。エレベーターなどのバリアフリー設備のほか、保育園や公園も整備した。「ただ建て替えるだけではなく、緑や遊び場を新たに増やすのは興味深いです」

 高台のふちを歩くと、部屋が3方向に「Y」の字のように突き出た、5階建ての建物が見えてきた。1962年に建てられ、国の登録有形文化財にも指定されている「スターハウス」だ。高度経済成長期に多く建てられた建築様式で、特徴的な設計は、すべての部屋を角部屋とするため。「今から見ると、むしろ新しい。住む人がたくさんいるからこそ、どこかでゆとりが欲しいもの。それは昔も今も変わらないですよね」

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旧赤羽台団地の「スターハウス」と写真に収まるマライ・メントラインさん=東京都北区、篠田英美撮影

 歩くうちに「URまちとくらしのミュージアム」が見えてきた。団地を管理するUR都市機構が再整備事業の一環として2023年に開館し、戦前から戦後までの歴史的な団地の部屋が6つ復元されている。

収納スペース、間取り…… 意外な広さ

 まず見学したのは、1927…

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