Smiley face
写真・図版
後南朝の皇子・自天王の遺品とされる重要文化財「縹糸威筋兜」(室町時代前期、奈良県川上村所蔵)=春日大社提供
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 室町中期、奈良・吉野の山中で南朝の再建を目指すも、18歳で殺害されたという「後南朝」の皇子・自天王(じてんのう)の遺品とされる兜(かぶと、国重要文化財)が今夏、奈良市の春日大社で公開される。同大社などが30日発表した。吉野の人々が500年以上守り続けてきた門外不出の宝物が、初めて地元を離れて展示される。

 自天王は南朝最後の天皇、後亀山天皇の末裔(まつえい)とされる。南北朝統一(1392年)後、北朝と南朝が交互に即位する約束が守られず、反抗した勢力が「後南朝」として活動。1443年に京都の内裏を襲い、皇室に伝わる三種の神器のうち神璽(しんじ、勾玉〈まがたま〉)を奪取したが、57年に奪還のため吉野に侵入した北朝勢により、自天王は弟の忠義王とともに殺害された。

 後南朝勢は侵入者を討ち取って兄弟を手厚く葬り、その翌年から非業の死を遂げた2人をしのぶ「御朝拝式(おちょうはいしき)」を毎年2月5日に途切れることなく開いてきた。自天王の遺品とされる「縹糸威筋(はなだいとおどしすじ)兜」は現在、奈良県川上村が保管。普段は金剛寺境内にある宝庫の中に飾られ、式の時だけ扉が開かれる。

 今回、春日大社国宝殿で、国宝指定の甲冑(かっちゅう)類18件のうち9件が一堂に会する特別展「究極の国宝 大鎧(おおよろい)展」(7月5日~9月7日)が開かれるのにあわせ、初出陳することになった。春日大社の担当者と共に会見した川上村水源地課の吉田志帆副課長は「村としては兜を村外で展示する最初で最後の機会と考えている。多くの人に後南朝の歴史を知っていただければ」と話した。

 自天王の兜は7月19~21日と8月28日~9月7日の計14日間公開される。拝観料一般1500円、高校・大学生1200円、小中学生500円。問い合わせは春日大社国宝殿(0742・22・7788)へ。

共有