訪日した北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長が9日、石破茂首相と会談し、安全保障分野での更なる連携強化を確認しました。両者が接近する背景には何があるのか。欧州政治や国際安全保障に詳しい慶応大の鶴岡路人教授に話を聞きました。
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――NATOと日本の接近が近年、加速しています。
NATO諸国、特に欧州の安全保障が、インド太平洋の情勢の影響を受けるようになったという構造が背景にあります。
例えば、中国はロシアのウクライナ戦争を武器製造の側面から支援しています。NATOは昨年7月の首脳宣言で、中国を「ロシアの侵略の決定的な支援者」という言葉で警告しました。北朝鮮によるロシアへの兵士の派遣や、砲弾などの殺傷兵器の供与はより直接的な支援で、象徴的な事例です。
欧州の安全保障を確保するためには、インド太平洋に目配りしないといけない。そうした認識が欧州で非常に高まっています。そのため、欧州各国はロシアへの対応もあるなか、日本を含むインド太平洋諸国に継続的に艦艇や戦闘機を派遣しています。
中国と向き合う日本にとっても、「中国の行動に懸念を持っているのは日本や米国だけでない。世界が注視している」という戦略的メッセージは非常に大きいでしょう。
トランプ再登板で必要になった「保険」
――1月に再登板したトランプ米大統領の存在は、NATOと日本の関係にどのような影響をもたらしましたか。
日本にとってはまず日米同盟…