朗読劇の冒頭、左手をかざすシーンを練習する田中典子さん=2025年8月2日、大阪府大東市、井手さゆり撮影

 「私はノリコと言います。――他の子と少し違ったのは、左手の指が何本かと、左足のひざから下がなかったっていうことだけです」

 モノローグで始まる朗読劇の冒頭、主人公は左手をかざす。生まれつき左の手足に障害がある田中典子さん(58)は8月24日、大阪・関西万博の舞台に立つ。届けるのは自身の半生の物語だ。

 京都府京丹後市で生まれた。学校では義足をからかわれ、音楽の授業では皆がリコーダーを吹くなか、1人だけ鍵盤ハーモニカだった。プールの授業は当然のように見学だった。両親は一生懸命育ててくれたが、母親はたびたび「ごめん」と言って泣いた。

 21歳の1度目の結婚は障害を理由に相手の親族から猛反対を受け、挙式できずに籍だけ入れた。子どもが3人生まれても、同居する義母に茶わんを何度も捨てられた。「障害者だから仕方がない」。そう思っていた。ずっと自分が嫌いだった。

 転機は2018年。使っている義足の会社から「義足女子会」の案内が届き、行ってみた。

自分とは正反対の「生き方」

 チェック柄のテーブルクロス…

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