難民認定の申請中でも強制送還できるようにする改正入管難民法が10日、施行される。外国人労働者の受け入れ拡大が進む一方、ルール違反への対応は厳格化される。日本に難民としての保護を求めている人の間では、迫害のおそれがある母国に送還されかねないとの懸念が広がる。
記事の後半では、政府の難民不認定を覆した裁判事例をはじめ、送還への不安を抱く当事者の声、難民審査のあり方についての識者の提言などを紹介しています。
従来、難民申請をしている間は送還を一律に停止する規定があった。改正法は、3回目以降の申請者が、難民と認定すべき「相当の理由」を示す資料を出した場合を除き、送還できるとする。
昨年の通常国会で政府は、強制退去処分が決まったのに送還を拒む外国人が増え、2022年末には4233人に達したと説明。一部は送還を回避するために難民申請を繰り返しているとして、法改正に理解を求めた。
改正法では、強制退去が決まった人を原則として施設に収容してきた措置を改め、外国人を監督する支援者のもとで暮らす「監理措置」制度も導入する。
「難民鎖国」との批判も
難民認定を待つ外国人や支援者らには「保護されるべき難民の生命が脅かされる」との不安が高まっている。日本も加入する難民条約は、人種や宗教などを理由に迫害される恐れがあり、母国から逃れた人を難民と定義。迫害の恐れのある国へ送還してはならないとする。日本は欧米の国に比べて難民認定率がきわめて低く、「難民鎖国」との批判もある。
一連の改正では、条約上の難民と認められない場合でも、紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度も新設。ウクライナからの避難者らを念頭にした規定で、昨年12月に施行された。
4度の難民不認定、高裁が覆す判決 「理解欠く」と国批判
改正法の付帯決議には、難民認定の審査に関わる調査官らへの研修の充実や、各国の政情などの情報を収集する体制の強化を求めることが盛り込まれた。難民問題の専門家の間には、難民認定の審査の透明性を高めるため、政府から独立した第三者機関が審査を担うべきだとの指摘もある。(久保田一道)
難民として保護を求めていても、強制送還されかねない――。改正入管難民法の10日の施行に不安が広がっている。難民と認めない政府の判断が裁判で覆される例もあり、難民審査のあり方こそ見直すべきだとの批判は根強い。
「迫害の恐怖を抱く客観的事…