全国高校農場協会の橋本智会長=2024年12月27日、栃木県立真岡北陵高校、由利英明撮影

 世界的な穀物価格高騰や国内でのコメ不足、野菜の値上がりなど、食と農への関心を高めるできごとが続いている。現場で働く人材を育成する農業系高校の課題と役割は何か。教職員が加盟する全国高校農場協会の橋本智会長(58)に聞いた。

 日本の農業は、農家が高齢化したり後継者が不足したりして、生産の土台がますます揺らいでいる。主に農業を仕事とする基幹的農業従事者の数は、2000年の約240万人から、23年には約116万人と半分以下に減少した。

 農業系学科を設置している高校も、文部科学省の調査によれば、1970年の679校から2023年には296校と半分以下になった。食料自給率の低下や減反政策の開始、大学進学率の上昇などを背景に志願者が減少したこともあり、農業を教える学校は大幅に減っている。

 農業系高校はかつて、「普商工農」と人気のなさを揶揄(やゆ)された。今も高校進学者の7割以上が普通科を選び、普通科重視の流れは変わらない。近年、農業系高校の数は微減にとどまるが、少子化でさらに統廃合される可能性があり、橋本さんは「都道府県内の各地域に残してほしい」と訴える。

 埼玉県出身の橋本さんは、高校受験で公立進学校に合格できず、東京都内の私立進学校に進んだ。そこで受験教育に疑問を感じ、本ばかり読んだ。そのとき偶然手にした一冊が、愛知用水建設の先頭に立った一人、農家の久野庄太郎の自伝だった。

 農業を学びたいと宇都宮大農…

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