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赤色の馬門石(左上)が露出している宇土道路の建設現場=2025年5月12日午前11時38分、宇土市網津町、伊藤隆太郎撮影

 八代海の蜃気楼(しんきろう)「不知火(しらぬい)」の撮影に成功して話題となった熊本県立宇土高校が、今度は「馬門石(まかどいし)」の謎に挑んでいる。ほのかな赤色をした貴重な石材として珍重されてきたが、なぜ赤いかは不明だった。このほど研究の経過を専門家の学会で発表し、注目された。

 馬門石は9万年前の阿蘇山噴火による火砕流が堆積(たいせき)してできた溶結凝灰岩の一種。だがほとんどは黒色で、石切り場があった宇土市網津町などの限られた産地だけで赤色が見つかる。古墳時代には石棺に使われるなど歴史的にも価値が高いため、解明できれば貴重な成果になると期待されているという。

 宇土高校の科学部地学班は、実験や現地調査を重ねている。黒色の馬門石を1千度で燃焼させたところ、赤色へ変化した。そこで「鉄が酸化してヘマタイト(酸化鉄の一種)が生成した」という仮説を立てたが、専門機関の協力でX線回折などの分析をしてもヘマタイトの成分ははっきりしなかった。謎は深まっている。

 このほど国の許可を得て、石切り場跡そばの道路建設現場を訪ねた。切り立った崖に、赤と黒の両方が露出している。「色の境界はどうですか?」。顧問の本多栄喜教諭が部員に問いかけた。3年の吉田大暉さんが答える。「不明瞭です」

 火砕流が堆積した時期の違いなら、境界はもっとくっきりすると吉田さんは考える。「空気の触れ方や酸化の仕方などの微妙な差かも」。調べたいことは、ますます広がっていく。

 今後は網津町以外の赤色をした火砕流堆積物の分布を調べたり、岩石中のヘマタイトを検出する方法を考えたりしたいという。

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