お立ち台でスポットライトを一斉に浴び、テレビのインタビューを受ける先輩たちの雄姿を、離れた場所で眺めている選手がいた。
「純粋にうれしいです」
第101回を迎えた箱根駅伝。大会新記録で連覇を成し遂げた青学大の強さが際立った中、控えメンバーの黒田然(ぜん)(1年)は喜びと、危機感を口にした。
「優勝した分、次も期待される部分はかなり大きい。僕がチームを引っ張るぐらいの自覚を持ってやらないといけない。明日から練習をガチで頑張ります」
- 青学大の太田蒼生が「ピカソ」と重ねる箱根の魅力 誓う4度目の衝撃
兄は、同じ青学大の朝日(あさひ)(3年)。世代屈指のランナーで、今大会は2区(23.1キロ、鶴見―戸塚)を走った。東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)が1時間5分31秒の区間新記録で区間最高をマーク。区間3位の朝日も1時間5分44秒でこれまでの区間記録(1時間5分49秒)を上回る快走をみせた。
チームの戦略として、当初は然が2区にエントリーされていた。2日、当日の変更で朝日に代わった。
「そこには何も思っていない」と然。
「朝日なりのプランも立てていたと思うので、安心して見ていた。本当にしっかり走ってくれて、誇らしい気持ちです」
2人は岡山県出身で、地元・玉野光南高校を卒業した。然は高校3年で出場したインターハイの男子3000メートル障害で全国2位。強みは、兄と同じく上り坂でもスピードが落ちないことだ。
然は、兄の走りをずっと間近で見ていたからこそ、そのすごさを語るときは冗舌になる。
「自分がどういう走りをすればいい結果につながるのか、それを走る前からちゃんと理解していると思います。立てたプラン通りにきっちり走れるのが本当に朝日の強みだと思う」
「今大会は集団で固まっている状態でたすきをもらい、一時は10位から12位まで落ちたんですけど、全く動じずに後半はしっかり上げた。集団で最初の方に抜かれると焦る部分もあると思うのに、朝日の上り坂に対する自信がそういう走りにつながっている」
「強すぎる兄」と比べられる可能性もよぎった
兄にあこがれたから青学大を選んだ、と思われることが多い。ただ、然はそれをきっぱりと否定した。
「青学大を選んだことに、朝…