プロ体操選手として世界の舞台で活躍し、2022年に現役を引退した内村航平さん。普及活動に携わる中で、体操教室を営む父親を改めて尊敬しているといいます。
美しい体操の根源に
父親も元体操選手で、長崎県諫早市で体操教室を営んでいます。口数が少なくて穏やかですけど、間違ったことがすごく嫌いな人ですね。幼い頃は友達とのけんかや家族への暴言でよく怒られました。怒るととても怖かったです。
僕は小さい時は食べ物の好き嫌いが多くて、「ごはんを作ってくれた人の気持ちを考えたことあるか」「米粒1粒作るのに、どれだけ時間がかかったかわかるか」とよく言われました。人間形成の部分をすごく指摘されましたね。「そこがちゃんとなってないと、体操もうまくならない」って。その時にはそのつながりが全くわからないですし、深く考えることはしてなかったです。でも、体操で結果が出だしてから「こういうことかな」と気づくようになりました。
僕が大人になっても、そこは厳しいです。オリンピックの年に初詣に行ったとき、寒くて手袋をしたままお参りしたんです。それをニュースで見た父親から、「あれは外さなきゃダメだ。礼儀作法を知らない人だなって思われるよ」と言われました。
競技の技術のことはあまり言われなかったですが、僕の大事にしている美しい体操の根源には、「10回美しくない技ができるより、1回きれいな技をできる人の方がすごい」という父親の教えがあります。
体操って、すぐできるような…