「多田屋」の社長、多田健太郎さん。用度室は壁が崩れた=2024年12月4日、石川県七尾市、金居達朗撮影

 2024年1月1日に発生した能登半島地震。あれから約1年が経ち、人々の暮らしを支える経済活動の復興も進みつつある。だが、人口流出や人手不足などがあり、事業の再開がままならない企業も少なくない。

 北陸有数の温泉地、和倉温泉(石川県七尾市)は年間60万人を集める地域経済の中心地だ。だが、被災から1年近く経っても、ほとんどの旅館が休業したまま。本格的な再開には「少なくとも3年以上はかかる」。そうした見方もある。

 観光客らでにぎわうJR金沢駅前から車で約1時間半。12月上旬の平日、和倉の中心部で源泉がわき出る「湯元の広場」に人の姿はほぼなかった。

 シャッターを閉じたままの店も少なくない。広場前の土産物店「だるまや」の小泉尚子さん(65)は「近くの土産物店で、開けているのはうちだけ。1年前から何も変わっていません」。

 店内のガラスのショーケースは割れたまま。時折訪れるボランティアや復旧工事の関係者に向けて店を開けてきた。

「だるまや」の小泉尚子さん。住居兼店舗は半壊し、雨が降ると雨漏りする。1年近くが経っても修理工事の順番待ちが続いている=2024年12月6日、石川県七尾市、福岡龍一郎撮影

 工事業者には修理を頼んでいる。ただ、順番待ちが続き、本格的な修理はできていない。「あまりに広い地域に大きな被害がでたし、仕方がない。でも、このまま冬を越せるのかと心配です。観光客は戻ってくるのでしょうか」

 和倉温泉旅館協同組合によると、加盟する21旅館のうち、一般客の受け入れを再開したのは27日時点で四つにとどまる。来年は5館が再開する見通しだが「復旧のスピードが速いとは言えないでしょう。山登りでいえば、まだ1.5~2合目くらいです」(宮西直樹事務局長)。

■割れた護岸、傾いた建物 大…

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