第2次世界大戦中の空襲による民間人被害者でつくる全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)が求めている救済立法が、足踏みを続けている。超党派の国会議員連盟(空襲議連)が法案の準備を進めているが、与党や政府内の反対が根強いためだ。戦後80年、被害者たちは「時間がない」と訴える。
戦後80年 訴え続ける被害者「時間がない」
空襲被害者の補償請求は、裁判では長年「戦争被害受忍論」の壁に阻まれてきた。被害者らは国会に立法を求める運動に軸足を移し、超党派の議員連盟も結成。2020年には法案のもととなる要綱案をつくり、野党は賛成でまとまった。
しかし、与党内で反対論が根強く、自民では党内手続きに入れない状態が続いた。厚労省も、法成立後に担当省庁になることを前提とした議論にすら否定的な対応を続けてきた。
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空襲被害者らでつくる「全国空襲被害者連絡協議会」(全国空襲連)の4月の集会で、議連会長を務める平沢勝栄氏のあいさつには悲壮感があった。「山登りでいえば9合目まで到達している。10合目に行こうとすると、なぜか妨害が入って進めない」
救済法が成立すれば、受忍論などを理由に民間戦争被害者の多くを救済してこなかった政策の見直しとなる。政府にとっては「すでに解決済み」としてきた戦後補償問題に再び直面することを意味する。
今回やっと法案に「昇格」し、平沢氏は「雰囲気が変わった」と語ったが、ある閣僚経験者は「(自民党内は)ネックだらけ。見通しはどこも明るくない」と警戒をゆるめない。
戦後80年となり、高齢化が進む被害者たちは「時間がない」と訴えてきた。総会終了後、東京大空襲で母と2人の弟を亡くした河合節子さん(86)は、「いままで空襲の民間被害はなかったかのようにされてきたが、法律ができればそうではないと示せる」と期待を込めた。
否定的な政府・与党 「空襲だけというわけには」
「先の大戦において、全ての国民が何らかの戦争の犠牲となった。政府は一般の社会保障施策の充実などを図る中で、空襲被害者を含む一般戦災者の福祉の向上に努めてきた」。林芳正官房長官は8日の記者会見で述べた。空襲被害者に対する救済立法を求める世論があるなか、政府・自民党は否定的な立場を貫き続けている。
厚労省は戦傷病者や戦没者遺…