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もがみ型護衛艦=海上自衛隊ホームページから

 防衛省は7月、2023年度の自衛官の採用計画数に対する達成率が過去最低の51%だったと発表しました。1万9598人を募集しましたが、9959人の採用にとどまりました。少子高齢化の影響が大きいとみられていますが、厳しい職場環境が若い人から敬遠されている側面もありそうです。防衛省海上幕僚監部防衛部長として防衛力整備にも携わった渡辺剛次郎元海将は、さらに人員不足が続けば、自衛隊としての能力発揮や安全性の確保に問題が生じかねないと語ります。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ250人近い国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

 ――自衛隊は23年3月末現在、定員約24万7千人に対し、現員が約22万8千人で、充足率は92.2%です。

 海上自衛隊の人員不足は当たり前のように受け止められていますが、大きな問題です。例えば、米軍は充足率という言葉をほとんど使いません。

 艦艇の「定員」は、「能力の全力発揮と安全運航のために必要な乗組員の数」です。米海軍では「定員」の人数を配置することが基本です。海自で、年間を通じて「定員の〇%の乗組員で運用している」という状況は、なかなか理解しがたいようです。

 ――海自、特に艦艇の場合、職場環境が厳しいので人が集まらないという指摘もあります。

 水上艦の場合、長ければ半年近く海上に出ます。毎日、見えるのは海だけですし、狭い空間での共同生活には、ストレスを感じることもあるかもしれません。遠洋練習航海などでは「100日マジック」という言葉もあります。航海が100日目くらいになると、仲が良かった者同士でもなぜか一時的に人間関係がギクシャクする時期があるからです。

 ただし、例えば曹士(幹部以…

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