自作の前で語る美術家・吉野辰海さん=6月、東京都中央区

 「1945年は何の年ですか」――。第2次世界大戦を体験した美術家らが戦後80年の今、何を記憶し、どう表現するのか。「体験を語れる作家が少なくなるなか、そのメッセージを伝えたい」という思いで企画された展覧会が東京・銀座で開かれている。初日には出品者が思いを語った。

 「殺すな」と大書きされた紙を持って焼け野原を歩くヒッピー風の男。美術家の吉野辰海さん(85)の出品作6点のうち、鉛筆画の新作「殺すな」だ。被爆直後の長崎の風景とベトナム戦争時の1970年に仙台で行われた反戦パフォーマンスの光景を重ねている。

 5歳の時に宮城県で終戦を迎えた吉野さんは空襲の記憶がある。この作品の制作の背景には、「世界中で戦争をやっている」という意識があるという。

 「あらゆる生物の中でこれだけ同志を殺すのは、恥ずかしながら人間だけではないか。この性(さが)からは逃れられないという悲観的な考えも30%ほどあるけれど、とにかく『殺すな』と」

 浜松市生まれの画家・中村宏さん(92)は、空襲で燃え上がる中を女学生が逃げ惑う場面を目撃。

 今回はその体験を元に描いた…

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