西本尚子さんと愛車RX-7=次男の誠さん撮影

 「記者さんは、空港から長崎市内まではどうやって来られる予定?」

 そんな電話が西本尚子さん(79)からかかってきたのは、取材日が決まった数日後だった。

 私は当初、空港バスと電車を乗り継いで、市内にある西本さん宅まで向かう予定だった。

 「それでしたら、空港から時津港へ船が出てますから、ぜひそちらでいらしてください」

 提案を受けて、港で待ち合わせることになった。

 1便早い船に乗れたので先に待っていると、伸びやかなエンジン音を発する銀色の車が近づいてきた。

 「あらっ、早く着いたならお電話してくださればよかったのに。お待たせしてごめんなさい」

 そう言って西本さんは、愛車RX-7の運転席から降り立った。

 助手席に乗せてもらい、おすすめのカフェまでドライブし、そこで食事をしながら取材が始まった。

25年前に新車で購入

 マツダが製造したRX-7は、「ロータリーエンジン」を搭載したスポーツカー。

 通常のエンジンとは異なり、三角形のローターの回転運動で車輪を回す独創的な構造で、根強い人気を誇る。

 映画や漫画にも数多く登場したRX-7の販売は、すでに終了。

 今では、購入時よりも高い価格で取引されるほど人気だ。

 そんな車を25年前に新車で購入して、乗り続けてきた西本さん。

 来月中旬に80歳になるのに合わせて運転免許を返納し、愛車を手放すことを決めている。

 「2年前の誕生日に『もうすぐ80歳になるんだ』と気づいて、節目で返納しようと思ったんです。何かあってからでは遅いですから」

 取材は、RX-7との出会いや西本さんの歩んできた人生、そして、愛車を待っている「予期しなかった最高の結末」にまで及んだ。

初めてのマイカーは

 高校卒業後、生命保険会社の事務として18歳から57歳まで働いた西本さん。

 21歳の時に運転免許を取得…

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