トランプ米政権が「相互関税」の一部の発動を90日間猶予すると発表し、1カ月余り。高関税を課された東南アジアの国で、企業が増産態勢を敷いている。7月上旬の「期限」を迎える前に、製品を「駆け込み」で米国に輸出するためだ。
【連載】閉じゆく世界 トランプ関税の現場から
トランプ米政権が一方的に高率の関税を課す「トランプ関税」が、世界を揺さぶっています。戦後の自由貿易体制のもとでモノをつくり、取引してきた現場ではいま、何が起きているのか。各地の特派員が報告します。
カンボジアの首都プノンペン郊外の幹線道路沿いに、衣料品などを製造する工場が立ち並ぶ。工業団地に掲げられた看板は中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」のQRコードつき、周辺の料理店には「麻辣麺」「四川海鮮自助火鍋」などの看板が連なる。
「ほとんどが、中国からの投資で建てられた工場ですよ」。4月末、取材に同行した地元メディアの記者が教えてくれた。
第1次トランプ政権後に加速
カンボジアで縫製業が育ったのは1990年代後半から。中国や香港資本が工場を設け、比較的安価な労働力をベースに原材料を加工し、製品を米欧に輸出するモデルを確立した。その勢いは第1次トランプ政権の発足後に加速、今も米国市場への輸出に頼る状態だ。
そんなカンボジアに対して、米政権は4月、49%の「相互関税」を課すと明らかにした。米国が中国に対する関税率を大幅に引き下げたこともあり、アフリカ・レソトと並んで世界最高水準だ。
「中国からの投資には、良い面と悪い面がある」。労組幹部がそう語る真意とは。記事後半では、カンボジアの人びとから見た「49%」のもつ意味について論じています。
カンボジアの被服労連(C.…