「自由のための金のペン賞」の授賞式に集まったウクライナの記者たち=2025年5月4日、ポーランド・クラクフ、山口智久撮影

 世界ニュース発行者協会(WAN―IFRA)は5日、「AI時代にニュースの信頼性を守る5原則」を発表した。生成AI(人工知能)の急速な発達によって誤情報が広がる危険性が高まっていることから、信頼できるニュースを市民が選べるような環境づくりをAI事業者と協力してめざすための原則だとしている。

 欧州放送連合(EBU)と共同で作成した「5原則」は、①生成AIがニュースコンテンツを使う際には元の発信者の許可を得る②ニュースコンテンツが第三者の利益に使われる場合は、その価値を公正に評価する③AIに使われた元のニュースを市民に明示しアクセス可能にする④多様なニュースメディアを活用し、AIツールから得られる利便性を高める⑤テクノロジー企業と報道機関は対話し、安全性、正確性、透明性の基準を設ける、の5項目。

 同協会など報道・メディア26団体は2023年9月に「世界AI原則」を発表。生成AIの学習や利用においてニュースコンテンツを使う場合は対価を支払うなど公正に扱うように訴えてきた。

 だが、その後も無断利用や、AIによる誤った回答が出回る事態が後を絶たず、報道機関がAI事業者を訴えた訴訟も続いている。一方で報道機関が記事の要約や翻訳にAIを活用する動きも広がっている。読者によりよいコンテンツを届けるためにも、「5原則」に沿ってAI事業者と健全な関係を築く必要があるとしている。

「金のペン賞」、ウクライナの独立系報道機関に授与

 また、同協会主催でポーランド南部のクラクフで4日から始まった「世界ニュースメディア大会」では、報道の自由を守ることに貢献した個人や団体をたたえる「自由のための金のペン賞」が「ウクライナの独立系報道機関」に贈られた。

 ウクライナではロシアの侵攻以降、多くのメディアが閉鎖されたが、地域に根ざすデジタルメディアは、戦況や被害の実態のほか、避難者や戦争被害者の生活再建や心理サポートなどを丁寧に報じ、傷んだ地域社会の再生に貢献しているという。

 ウクライナ独立系報道機関協会のトップのオクサナ・ブロフコ氏は「私たちが書き続けるのは勇気があるからではない。沈黙は選択肢にはない。自分たちのために、そして世界のために自分たちが誰であるのかを記憶に刻んでいるのだ」と語った。

 同大会は3日間の日程で開かれ、分断する社会における報道のあり方やAIの活用法について話し合う。

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