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2022年北京冬季五輪、スケルトンのレース後に「NO WAR IN UKRAINE」と書かれた紙をカメラに向けるウクライナのヘラスケビッチ=ロイター

 もう3年半なのか、まだ3年半なのか。

 ウクライナのスケルトン選手、ウラジスラフ・ヘラスケビッチ(26)は、流れた月日の意味を自問することがある。

 思い切った行動に出たのは2022年2月11日、北京冬季オリンピック(五輪)のレース当日だった。3本目の滑走を終えた後、英語で書いたサインをテレビカメラに向けた。

 「NO WAR IN UKRAINE」(ウクライナに戦争はいらない)

 五輪憲章が、競技をする場での政治的な意思表示を禁じていることは知っている。だが、ロシアによる母国侵攻が現実味を帯び始めていた。

 空爆が始まったのは、その13日後。ヘラスケビッチは首都キーウの自宅にいた。たたき起こされた午前5時の爆発音を、今も忘れていない。

 「あの瞬間が、まだ覚めることのない悪夢の始まりだった」

 終戦への道筋が見えないまま、次の五輪が迫っている。

 北京冬季五輪の直後に始まったロシアのウクライナ侵攻は、終わりが見えない。五輪は「平和の祭典」の理想を体現できずにいる。ミラノ・コルティナ冬季五輪まで、あと半年。

薄れつつある母国侵攻への関心

 つらいのは、ウクライナに対する世界の関心が薄れつつあることだという。遠征で国外に出ると、メディアで扱われる量が減っていることを実感する。

 「ある意味、仕方ないのかなとも思います。ビルが壊され、火の手が上がる光景を視聴者は見慣れてしまった」

 イスラエルによるパレスチナ…

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