地震発生後、津波の浸水被害がどう広がるかを即時に予測するシステムが、11日に宮城県庁(仙台市青葉区)であった総合防災訓練で、試験的に導入された。的確な避難の呼びかけや、すばやい救助につなげる狙いで、東北大と民間企業が研究開発を進めてきた。
この日午前9時、三陸沖でマグニチュード9の地震が発生。震度5強~6強を観測し、沿岸部に津波が次々到達した――との想定で、大がかりな図上訓練が行われた。
「津波災害デジタルツイン」と呼ばれるリアルタイム津波浸水被害予測システムが、震源の情報や海底、地上の地形などをもとに、東北大のスーパーコンピューターで計算。地上を10メートル四方で区切り、時間とともに津波がどこまで達し、浸水深がどう変化するかの予測結果を、地震20分後には県や消防、警察などに提供した。携帯の位置情報をもとにした人流データで、発災時、その地点に何人が滞在していたかも推計できる。
中心になった東北大災害科学国際研究所の越村俊一教授は「東日本大震災では、被害の全容がつかめない中で災害対応をせざるを得なかったことが、教訓となった。予測情報を効果的な救助活動に役立ててほしい」と話す。日本のどこでも利用できるシステムで、越村さんらが起業したRTi―cast社は昨年3月、高知県を対象に、民間企業として初めて気象庁から津波予報の許可を取得した。
今後さらに予測精度を高め、行政機関だけでなく、個人のスマホなどに「あなたのいる場所にあと何分で津波が来る」と、ピンポイントで知らせる仕組みを実現することが、目標だという。