火野正平さん=2014年撮影

 歌手で俳優の火野正平(ひの・しょうへい)さんが14日、75歳で亡くなりました。2014年8月30日、9月6日、同13日の朝日新聞朝刊週末beに掲載した連載「逆風満帆」の3回分をアーカイブ配信します。上中下編の下編です。

【2014年09月13日朝刊週末be】

 火野正平(65)が全国を自転車で旅する「にっぽん縦断 こころ旅」(NHKBSプレミアム)の新シリーズ「秋の旅」は22日から始まる。今回は大阪から沖縄まで11府県を訪ね、12月まで走る予定だ。

 2011年の番組スタート以来、今春までの走行距離は47都道府県7508キロに。年2回、春と秋の旅で東日本と西日本をそれぞれ巡ってきた。視聴者が綴(つづ)る「こころの風景」を訪ね、その場で投稿された手紙を読む、というシンプルな構成の番組が、これほど長く続くとは、本人もスタッフも思っていなかった。

 「画面には俺一人。最初は、朝起きて“今日は何を話せばいいのか”と悩んだこともあったけど……。でも、基本的には何も考えてなかったな。今も」

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 いわゆる名所も史跡も登場しない旅番組だけに、案内役には手紙をくれた人の心に寄り添える人間的魅力を持った存在が必要だった。企画途中から参加するNHKエンタープライズのプロデューサー、北村卓三(51)は、「自然や動物が大好きで、独自の視点で旅の面白さを見つけられる人。タイの農村を訪ねるNHKの番組に出演した際には、言葉が通じないのに、なぜか現地のおばさんに大モテ。“この人しかいない”と思った」と起用の理由を語る。

 放送は月曜から金曜まで。「俺が毎日“感動した”“きれいだ”と言ってたら見ている方だって疲れるでしょ。本当は読んでて涙が出そうなお手紙もあるんだよ。でも、俺が泣いてどうする、って思うもん」。台本は視聴者からの手紙だけ。「俺が聞くのは“きょうはどこで飯食うの?”ぐらい」と笑う。いわゆるテレビ的な演出は極力排除し、そのままを見せるのが番組の特徴だ。

 たとえば放送開始当初は、火…

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