504人の命を奪った能登半島地震から、元日の午後4時10分で1年になります。新春を祝う特別な日に、大切な人を奪われ、かけがえのない暮らしを傷つけられた能登。年末年始を迎える人々の姿や風景を詳報します。
■■■2024年12月31日の動き■■■
23:00
除夜の鐘 家族だけでも
石川県珠洲市三崎町寺家にある真宗大谷派の専念寺では、21代目の畠山義邦住職(75)らが除夜の鐘をついた。
例年は鐘の音が聞こえると地域の人が集まって一緒についたが、今年は家族だけ。一帯は津波の被害に遭い、住む人もほとんどいない。この1年は本堂が解体され更地になるなど、悲しみで涙を流すことが増えた。一方で、鐘をつくことを報道で知った人から「元気を出してください」と丸餅が届くことも。
畠山住職は「いろんな人に助けていただいた1年だった。人間ってすばらしいなと思うと同時に、私は人の身になって生きてこられたのだろうかと考えた」と話した。「なるようにしかならない。来年は元気に過ごしたい」
19:20
紅白「楽しみ」
第75回NHK紅白歌合戦が始まった。輪島市門前町浦上の山崎進さん(76)は仮設住宅で、妻と2人で見入った。能登をテーマにした2曲が予定されており、「能登に注目してくれてありがたいし、楽しみだね」と話す。
春まで避難所暮らし。9月に能登北部を襲った豪雨でも公民館に3日間身を寄せ、落ちつかない1年だった。長男一家6人と同居していた自宅を少しずつ補修し、元日だけは家族8人で自宅で過ごす。「千年に一度の地震と百年に一度の豪雨。誰にも経験できないことを経験できたと思うしかないが、早く自宅に戻って遅れた分を取り戻したい」
紅白歌合戦では、後半に坂本冬美さんが輪島市からの中継で「能登はいらんかいね」を歌唱し、終盤に登場する石川さゆりさんは「能登半島」を披露する。
18:00
空港の仮設宿泊所 ひっそりと
石川県輪島市の能登空港敷地内にある仮設宿泊所は、ひっそりとしていた。主な利用者は県庁や県外から応援に入る自治体職員で、年末年始は帰省しているという。明かりのともる部屋はほとんどなかった。
コンテナハウス型など346人分288室を備え、支援者向けに3月に設置。奥能登はもともと宿泊施設が少ない上に、被災によって休業する施設も多く、宿不足が課題となっていた。
支配人の宮口元木さん(46)は「あっという間の1年だった。みなさんが元の生活に戻り、早くこの施設がなくなることが理想。そのために活動してくれる支援者の方々に、少しでも快適に過ごしていただけるよう、来年も努めたい」と話した。
18:00
輪島のスーパー 帰省客らでにぎわう
石川県輪島市宅田町の商業施設「パワーシティ輪島ワイプラザ」は、帰省客を含め多くの家族連れでにぎわった。スーパーのグルメ館には、大人数用の刺し身やすし、焼き肉の盛り合わせが並んだ。
東京から帰省した前田亜紀さん(57)は、天ぷらを買いに来店した。実家は輪島市内の朝市通り近くにあり、元日の地震で全焼。年末年始は母、兄、弟の家族4人で、被害を免れた兄の自宅で過ごす。
地震後、兄や弟と連絡を取り合う機会が増えた。「地震があってから家族の絆が深まったように感じる」という。両親ともに市内の介護施設で暮らしている。一時帰宅した母は、今でも地震のことを思い出して涙を流すという。「力を合わせて、来年も両親を支えたい。家族で楽しく年を越します」
■和倉温泉の「総湯」に次々と…