【囲碁ライブ】一力遼名人ー芝野虎丸十段【第50期囲碁名人戦第1局2日目】(中継終了後、アーカイブはユーチューブ「囲碁将棋TV」のメンバー限定になります)
先勝するのはどちらか――。一力遼名人(28)=棋聖・天元・本因坊と合わせ四冠=に芝野虎丸十段(25)が挑戦する第50期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第1局は27日、鹿児島市の「城山ホテル鹿児島」で前日から打ち継がれる。
現代碁界の覇権を担う若き両雄が50年目を迎えた節目の名人位を争う。昨年の第49期七番勝負と名人、挑戦者の立場を入れ替えての再戦で一力は初防衛を、芝野は復位を目指す。
対局は2日制で持ち時間各8時間。1日目は先番の名人の攻勢を巧みにさばいた挑戦者が優位に進め、名人が101手を封じて打ち掛けとなった。
消費時間は名人2時間53分、挑戦者4時間38分。27日午前9時に再開し、夜までに終局する見込み。朝日新聞のデジタル版では、七番勝負の模様をタイムラインで徹底詳報する。
- 【1日目詳報】流れは芝野挑戦者 劣勢の一力名人、控室「いい手見えない」
18:30
一力名人、囲碁将棋TVに出演
午後6時半ごろ、大盤解説会でのあいさつを終えて、一力遼名人が対局会場に戻ってきた。すぐに朝日新聞のユーチューブチャンネル「囲碁将棋TV」に出演。同チャンネルで第1局の解説を務めた広瀬優一七段と共に、対局を詳細に振り返った。
1局目総括
勝負の分かれ目はどこに
1日目に劣勢に陥った一力名人は2日目の対局再開後、左辺黒121の勝負手を放った。検討陣は「無理気味」と軽視していたが、手が進むほどに戦いは難解さを増し、芝野挑戦者を追い詰めた。
石と石がぶつかり合う接触戦は、一手誤ると形勢が大きくぶれる怖さがある。名人の読みの深さと、局面の混迷化を図る勝負術が発揮された。
挑戦者の上辺白158が敗着とされる。ここでAIの形勢判断は挑戦者の勝率80%から名人の97%へと大きく反転した。挑戦者は左辺の黒十数個を捕獲したが、名人が左上隅の白地を侵食しつつ白石5個を取ったのも大きく、先手で他の要所に回って逆転した。
1日目の布石は挑戦者の好プレーが際立った。名人の攻めを巧みにかわし、悪手らしい悪手がない石運びで2日目に入ったが逃げ切れず、名人に捕まえられた。名人の勝負手に対し、挑戦者は真っ向から撃退しにいったが、優勢を保持する妥協策もあったようだ。
解説の本木克弥九段は「1日目の名人は変調と思いましたが、2日目に入って混沌(こんとん)とした局面に持ち込んだのはさすがの勝負術でした。名人の勝負手のあとも、まだ挑戦者がよかったかもしれませんが、非常に難解で、もはや一筋縄ではいかない状況でした」と話した。
持ち時間各8時間のうち残り時間は名人1時間14分、挑戦者1分。
第2局は9月3、4日、長野県高山村で打たれる。
18:00
大盤解説会場に両対局者
午後6時ごろ、対局を終えた一力名人と芝野挑戦者が、鹿児島市中央公民館の大盤解説会場に登場した。この日の昼から激闘を見守り続けた囲碁ファンが、拍手で迎えた。
一力名人は「1日目は苦しかった」と振り返りつつ、2日目以降に「少し良くなった」と実感したという。「まだまだ始まったばかり。2局目以降も熱戦にできるように頑張ります」と意気込みを語った。
芝野挑戦者は、対局場から解説会場までの車中で対局中のAIの評価値を見たそう。「いい碁で負けてしまったのは残念」としつつ、「名局になりそうだったとも聞いたので、名局ということにして切り替えて頑張りたい」と語り、笑いを誘った。
17:30
終局後コメント
第1局が終了し、報道陣の取材に応じた両対局者のコメントは以下の通り。
一力名人の話 1日目で少し悪いかなと思っていた。(勝負手の局面は)動き出していく以外、勝機は薄いと思っていたので、やっていくしかないかなと。1日目の内容が良くなかったので、次はもう少しいい碁を打てるように頑張りたい。
芝野挑戦者の話 1日目終了時は、いい勝負か少し苦しいと感じていた。(名人の勝負手は)形勢に自信がなかったので、来られたら仕方ないと考えていた。今日の碁がどうだったか分かっていないが、また準備して頑張りたい。
17:28
一力名人が勝利
芝野挑戦者が投了した。一力名人が197手までで黒番中押し勝ち。大逆転でのシリーズ1勝目になった。
16:10
高尾九段「投げてもおかしくない」
名人の勝負手を挑戦者が真っ向から迎え撃ち、名人の黒の一団が捕獲されるか、脱出できるかの正念場で、名人が逆転に成功した。
名人は黒1から脱出を図り、挑戦者は白2から黒の出口を塞ぐ。しかし挑戦者の白8にAIが激しく反応。評価値は挑戦者の勝率80%から名人の97%に反転した。
黒9以下白12まで、AIの想定した進行。白は左辺に散在する多くの黒石を捕獲したが、黒11と白石5個を抜いた戦果が大きく、しかも先手だ。黒13と黒地を広げて、はっきり黒よし。立会人の高尾紳路九段は「(挑戦者が)投げてもおかしくない」という。
16:05
評価値が大逆転
芝野挑戦者が158手目を打った瞬間、AIの評価値が大逆転。挑戦者の勝率80%が、一力名人の勝率96%となった。検討陣も動揺を隠せない。
記録係は兄妹
本局の記録係は竹下凌矢二段(20)と竹下奈那初段(17)が務めている。2人は兄妹。事前に日本棋院の職員から「兄妹でも大丈夫でしょうか」と打診された。
兄は冷静に受け止めた。妹はびっくりしつつも「やりやすいかな」と感じた。「何かあっても頼みやすいから」
兄は自覚していないけれど「仲が良いね」と周りからよく言われる。妹は「仲は悪くないと思います」と笑顔を浮かべる。
兄が中学1年生のころから2人は別々に暮らしている。
小学2年生のときに兄は囲碁を始めた。たった1年半後、全国大会準優勝を果たす。「全盛期でした。1週間で5、6級上がって、負けた相手もすぐボコボコにできて楽しかった」
プロ養成機関に入り、中学1年生のときに師匠の藤沢一就九段の内弟子になった。親元を離れ、囲碁漬けの日々を送り、プロになった。
兄を見て囲碁を始めた妹。ずっと兄を追いかけてきた。「囲碁は自分には、みなさんにとっての学校みたいな感じで。囲碁がない生活は想像できなかったんです」
互いにプロになったいまも、兄妹は離れて暮らしている。たまに兄が家に帰ると、囲碁を打つ。研究会で対局することもある。お互いにどんな成績なのかは、やっぱり気になる。まだ公式戦はないけれど、兄は「奈那とやったら、真剣にうてるか心配」と笑った。
囲碁がつなぐ「ちょうどいい距離感」が2人の日常になっている。
15:00
共に鹿児島ゆかりのおやつ
午後3時になり、両対局者のもとへおやつが運ばれた。
一力名人は、城山カステラとフルーツの盛り合わせを注文した。
城山カステラは、対局場となった城山ホテル鹿児島のオリジナル商品だ。長崎の洋菓子店「須崎屋」特製で、鹿児島の知覧茶を練り込んだ生地からは緑茶の香りがふんわり。メロン、ナシ、スイカ、オレンジ、マスカット、ブドウと色とりどりのフルーツが添えられた。
ドリンクは、ピンクグレープフルーツソーダを注文。前日に続いての炭酸。苦境も泡のように消したいところだ。
芝野挑戦者は、かるかんとフルーツの盛り合わせ。鹿児島の和菓子店「明石屋」のかるかんまんじゅうは、前日に名人も注文した鹿児島銘菓だ。
フルーツは赤メロン、スイカ、パイナップル、ナシにブドウ。マンゴードリンクもあわせていただくそうだ。
昼食は両対局者とも軽めに調整していたが、おやつはガッツリ。糖分を補給して、万全の状態で最終盤に臨みたい。
囲碁大使Joannaさん、音楽と囲碁の二刀流
鹿児島市中央公民館(同市山下町)では27日午前、初心者向けのイベント「囲碁Fantasia」が開かれた。主催はシンガー・ソングライターのJoannaさん。日本棋院の委嘱する「囲碁大使」も務めている。
東京出身のJoannaさんは、日本とフィリピンにルーツを持つ。囲碁好きの父の影響で、物心ついた頃には碁石に触れていた。
「碁笥(ごけ)から石を取り出す音、打つときのパチッという音が好きでした」
小学生の頃、少年少女囲碁大会都大会で7位入賞したことも。四段の免状を持つ実力者だ。「多角的な視点を持ちながら音楽活動をできるのは、囲碁のおかげだと思います」
しかし子どもの頃、一度囲碁を離れた。
「通っていた囲碁教室で一番強かった分、『勝たないといけない』と思い詰めて、負ける度につらくなってしまったんですね」
歌で日本語を覚えた母の影響で、音楽活動の道へ。ただ特技欄には「囲碁」と書き続けた。「人と違うことも武器になると思って」
初心者向けのイベント「囲碁Fantasia」を始めたのは、2023年10月のことだ。
Fantasiaとは、作者が自由な発想で作る曲を指す音楽用語。日本語では「幻想曲」とも訳す。
「囲碁はもっと自由で、もっと楽しいものだと伝える場を作りたくなったんです」
棋力や年代を問わず、アットホームな空気を心がける。27日のイベントには、前日に囲碁を始めたという子どももいた。「囲碁に触れて『楽しい』という顔を見るのがうれしいです」
勝ち負けにとらわれていた昔に比べ、「私も囲碁を楽しめている」という。「でも強くなりたいとは今でも思っています」
音楽も囲碁も「両方頑張りたい」。碁会所でライブをしたこともある。二刀流の挑戦が続く。
13:30
大盤解説会スタート
午後1時半、鹿児島市中央公民館(同市山下町)で大盤解説会が始まった。大盤解説は倉橋正行九段、聞き手は木部夏生三段が務める。開始時刻には、すでに囲碁ファン約60人が集まった。
倉橋九段は現局面を「まさに佳境」と評する。「この先も複雑怪奇で、検討室でも皆悩んだ」
AIの形勢判断は挑戦者優勢だが、両対局者とも人間である。勝負の行方はまだまだ不透明。鹿児島に集った囲碁ファンたちは、対局を固唾(かたず)をのんで見守っている。
13:10
捕獲か脱出か
一力名人の勝負手に長考していた芝野挑戦者。真正面から受け止めるか、それとも妥協して延長戦とするか。
昼食休憩を挟んで41分の長考の末、決然と△に放った。左辺から中央に逃げんとする黒石の行く手を阻み、殲滅(せんめつ)にいった最強手だ。
こうなると双方とももう、後に引く手はない。黒は当然、白の包囲網を破りにいく。
捕獲か脱出か。いよいよ本当に、決戦に突入した。
タイムライン連載「囲碁よ」第20回
広瀬優一七段、名人戦リーガー24歳の危機感
広島に住んでいた5歳、保育園年長さんの時に囲碁と出会いました。月に1回、保育園に囲碁を教えに来て下さるおじさんがいて、教え方がとてもうまくて興味を持つようになりました。
すぐにのめり込んで、上達する喜びを感じることができたんです。両親にマグネット盤を買ってもらって家族で一緒に始めましたけど、すぐに物足りなくなって碁会所に通うようになりました。
囲碁というゲームがとても好きでしたし、自分は確実に上達しているんだと思えることが楽しかったのだと思います。
小学1年になる時、親の転勤で東京に引っ越してきました。師匠(藤沢一就八段)が主宰する「新宿こども囲碁教室」を見つけて通い始めたら、同い年の子に上野愛咲美さん(女流名人・女流立葵杯)、関航太郎さん(前天元、第49・50期名人戦リーグ在籍)がいて。プロを目指す子供たちが大勢いたんですね。
上野さんは今と変わらず元気で明るく、よく踊っていました。関さんなんてもうメチャクチャで、いつも走り回っていた感じです(笑)。毎日一緒にワイワイ勉強する仲間でしたけど、考えてみたら不思議ですよね……。2人とも強い棋士になっていったわけですから。当時は、恵まれているという自覚はなかったんですけど、すごくありがたい環境で勉強をさせてもらっていたんだなと思います。
周りの人がどうか、という環…