【囲碁ライブ】一力遼名人ー芝野虎丸十段【第50期囲碁名人戦第1局1日目】(中継終了後、アーカイブはユーチューブ「囲碁将棋TV」のメンバー限定になります)
力か、虎か――。一力遼名人(28)=棋聖・天元・本因坊と合わせ四冠=に芝野虎丸十段(25)が挑戦する第50期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は26日、鹿児島市の「城山ホテル鹿児島」で開幕する。現代碁界の覇権を担う若き両雄が50年目を迎えた節目の名人位を争う。
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昨年の第49期七番勝負は芝野名人に一力棋聖が挑戦。死闘を4勝2敗で制した一力が初の名人位を奪取した。今期は名人、挑戦者の立場を入れ替えての再戦となる。一力は初防衛を、芝野は復位を目指す。
対局は2日制で持ち時間各8時間。26日午前9時に始まり、午後5時半以降に打ち掛け。27日午前9時に封じ手を開封して再開し、同日夜までに終局する見込み。立会人は高尾紳路九段(48)。朝日新聞のデジタル版では、七番勝負の模様をタイムラインで徹底詳報する。
1日目総括
封じ手どうみる 本木克弥九段「いい手が見えない」
挑戦者の100手目△を見て、名人は午後5時31分、8分の考慮で次の手を封じた。焦点は、左辺の白模様に突入した黒の一団をどうまとめて整形を図るか。
しかし解説の本木克弥九段は「いい手が見えない」という。「黒に生きる手段はありますが、小さく生きるだけではいけない。劣勢の名人としては、ここで成果を上げなければならないのですが」
名人の封じ手はどこか。本木九段はA、B、Cの3手を挙げたが、どの手を打っても先の見通しに自信は持てないという。
名人、ピンチか。AIの評価値は挑戦者の勝率97%と、大きく偏っている。
17:31
一力名人、101手目で封じる
午後5時半に封じ手の時間を迎えると、1分半ほど考えたところで、一力名人が101手目を封じた。
17:05
挑戦者、局面の収束に乗り出す
挑戦者に分のある形勢が徐々にはっきりし、挑戦者は優勢を確かなものにしようと局面の収束に乗りだした。
黒1に白2の押しから白6のハネまで先手で決めて、白8で左辺に大模様を形成。黒9のマゲに白12が挑戦者の自信を示す一着だ。確実に陣地を確保して容易に負けないと見ている。
囲い合いでは間に合わないと見たか、名人は黒13と白模様に殴り込んだ。ここを根こそぎ荒らして白地を値切ろうとしている。
優勢の挑戦者は、突入した名人の黒石が生きるか死ぬかの一発勝負にはしたくない。盤上の不確定要素をどんどん狭めて局面を収束させたい。かたや劣勢の名人は、局面を紛らせて不確定要素を拡大したい。
いずれにしろ、左辺の攻防が勝負どころとなった。名人の逆転力は定評のあるところだ。一方、挑戦者の盤石の寄りも評価が高い。今回はどちらに軍配が上がるか。
17:00
手番による有利・不利は?
午後5時、AIの形勢判断(期待勝率)は白番の芝野挑戦者が95・3%、黒番の一力名人が4・7%。1日目から片方に90%以上の数値が示されるのは囲碁ではよくあることだが、両者の対局ではやや珍しい。
やはり手番による有利、不利が気になってくる。
一力名人は過去の芝野挑戦者との対戦成績で通算29勝17敗とリードしているが、本局と同じ黒番では13勝11敗と拮抗(きっこう)する。白番の16勝6敗からは勝率を大きく下げている。
前期の七番勝負も第2局から第6局の決着局まで5局連続で白番が制した。いかに「白番キープ」を許さず「黒番ブレーク」を果たすかは今期七番勝負でもカギを握りそうだ。
イゴギーク代表「地方で入門教室を」
名人戦第1局が打たれている鹿児島市では、イベント「囲碁フェスティバル」が開かれている。主催する「IGO GeeK(イゴギーク)」とは、どんな団体なのか。
設立は2024年。囲碁棋士の大澤健朗四段=日本棋院中部総本部所属=が代表を務め、学校や公民館で入門教室を開くなど、囲碁の普及活動を続けている。
長野出身の大澤四段には、こんな問題意識があった。
「囲碁棋士が東京、名古屋、大阪に固まっていて、地方に呼んで体験教室を開こうと思っても、費用の問題でなかなか難しい。プロ棋士が地方に呼べる環境を作りたいと思いました」
囲碁ファンが会員となり、イゴギークに支払う年会費や寄付金が、普及活動の資金になっている。日本各地だけでなく、米国など海外でも活動している。
開く入門教室のターゲットは、囲碁経験ゼロの初心者。「万人受けする競技ではなくても、どこかに囲碁だけに救われる、囲碁最高と思う人がいる。そういう人たちと出会いたいです」
イゴギークのイベントをきっかけに、囲碁教室が開設されたところもあるそう。「地域の囲碁愛好家の人たちとつながりたいですね。僕たちの入門教室のようなやり方が、イゴギークと関係ないところで広がっていくのが理想です」
15:15
おやつに鹿児島名物
午後3時15分すぎ、両対局者のもとにおやつが運ばれた。
一力名人は、かるかんとフルーツ盛り合わせ、そしてブラッドオレンジソーダを注文した。
かるかんは、鹿児島の和菓子の名店「明石屋」のもの。本来は、すりおろしたジネンジョ(山芋)に砂糖などを加えて蒸したものだが、あん入りの「かるかんまんじゅう」も人気だそうで、今回もこしあん入りのかるかんまんじゅうが提供された。
フルーツは赤メロン、スイカ、ナシ、パイナップル、ブドウとマスカットと色鮮やかだ。
芝野挑戦者は、バスクチーズケーキとアップルジュースを注文した。
ケーキは、対局場となった城山ホテル鹿児島4階のラウンジ「カサブランカ」で提供されているもの。フランボワーズソースとマンゴーソースがかかっている。クリーミーだが甘さ控えめの一品だ。
和の名人と、洋の挑戦者。甘味の趣向の違いを読み取るのも、名人戦の楽しみだろう。
■名人、寸前で矛を収める[1…