(27日、第106回全国高校野球選手権高知大会、高知3―5明徳義塾)
四回裏。高知先発の辻井翔大投手(3年)の投球が捕手に当たり、試合は中断した。治療の間に辻井投手は交代を言い渡された。
「五回までは行くつもりだったけど、バテて下半身に力が入らなくなっていた」。夏の大会直前の練習試合でけがをして、準決勝からようやく登板したばかり。投げ込み不足を自覚していた。
「がんばれ、託したぞ」。マウンドに向かう平悠真投手(3年)にそう声をかけた。
2人は2年生の時から背番号1を取り合ってきた。チームで「ダブルエース」と呼ばれている。
平投手は「絶対に抑える」と意気込んで登板。「自分のストレートを信じて、悔いがないように思い切り投げた」。
でも五回、三塁打などを浴び3失点。高知は八回から反撃の狼煙を上げ、九回にも粘ったが、逆転はかなわなかった。
試合後、記者に相手について聞かれた2人は、同じ言葉を口にした。
「あいつがいなかったら、自分はここまで成長できなかった」。
単なるライバルを超える存在に近づいていた。(原篤司)
高知の浜口佳久監督
初回のチャンスをものに出来ず、先制点を奪われたことが大きかった。8回にもチャンスが作れたが、時すでに遅し、という感じだった。万全ではない選手もいるなかで、みんなよくやってくれた。
高知の川村光輝主将
中盤にガッと得点され、なんとか逆転しようと出来ることは全部やった。みんな、それぞれの力を出しきれたと思う。自分たちは粘り強くやったが、明徳義塾の粘り強さの方が一枚上手だった。