映画「アイミタガイ」で、主人公の梓(黒木華さん、左)と澄人(中村蒼さん)が会話する場面=近鉄桑名駅、©2024「アイミタガイ」製作委員会

 子どものころ、祖父母や近所の人たちが「相身互い(あいみたがい)」と言うのを耳にしていた。三重県鈴鹿市在住の作家中條(ちゅうじょう)ていさん(68)は久しぶりにその言葉を聞き、深い意味について思いを巡らせた。こうして生まれた小説「アイミタガイ」が映画になった。中條さんが作品に込めた思いとは――。

 映画は、黒木華さん、中村蒼さん、藤間爽子さんら出演の「アイミタガイ」(草野翔吾監督)。11月1日からイオンシネマ鈴鹿など全国で公開される。

 中條さんは鈴鹿市で生まれ育ち、南山大学(名古屋市)を卒業した。2007年から主婦業のかたわら小説を書いている。

 「相身互い」という言葉を久しぶりに聞いたのは魚屋だった。魚の切り身を買ったのに忘れて帰ってしまったなじみの客。高齢の店の女性は、別の客に届けてくれるよう頼みながら、「この世は相身互いだからね」と言った。

 30歳ごろのできごとだ。「お互いさま」という程度に理解していたこの言葉の奥には何があるんだろう。その時からこの言葉が頭から離れなくなった。

「人は孤独を感じても…」 

 そして2人の子育ても落ち着…

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