Smiley face
写真・図版
ガッツポーズを決める大槻陽平さん=東京ヴェルディBS提供

 大槻陽平さん(23)は、2011年3月11日の東日本大震災当時、宮城県東松島市の小学3年生だった。

 金曜の午後、絵画教室に通うため、野蒜駅でJR仙石線の下り列車に乗り込み、走り出した直後。大人たちの携帯電話から、緊急地震速報の音が一斉に響いた。激しい揺れに車両が横倒しになりそうになる。

 98人を乗せた4両編成の列車は、海岸近くの高台で急停車した。

 JRの指令室は、近くの小学校まで全員を誘導するよう、無線で指示したという。「歩いている途中で津波が来たらどうする?」。乗り合わせた元消防団員や車掌らが話し合い、指示に反して列車に残ることを決めた。

 何が起きているのか、9歳の少年には知るすべもない。ただただ、心細かった。

列車に迫った津波 心削られた故郷の風景

 「津波だ!」と、誰かの声…

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