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 6月2日付朝日歌壇・朝日俳壇面のコラム「うたをよむ」をお届けします。筆者は歌人のユキノ進さん。従軍経験に基づく歌集を出した大家増三と、川野里子の近刊歌集から作品を引用し、「当事者でない者」が社会を語る言葉について考えます。

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うたをよむ  ユキノ進

 シンガポールの現代美術家ホー・ツーニェンの個展が東京都現代美術館で開催中だ。展示の一つが戦前の日本の知識人グループ京都学派を主題にしたもので、大東亜共栄圏を語る彼らの対話に同席した速記者の視点をVR(仮想現実)で体験することができる。この速記者はのちに従軍経験に基づく歌集『アジアの砂』を出す歌人の大家増三だ。速記者として、兵士として当事者の言葉が生々しい。

 絶対無などといえる語ありたりき彼の学者ら今いかなる語ありや

 自らにも来るいかなる死斬首終えて疎林ぬけ帰る野営のふしど

 川野里子『ウォーターリリー…

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