長崎に原爆が投下された日、爆心地近くの旧制中学校に通っていた父が助かったのはなぜか――。被爆2世が、謎を解いていく物語を北海道函館市の児童文学作家、森越智子さん(67)が書いた。「事実を正確に知り、想像する力によって自分事として考えたかった」と事実と創作を織り交ぜた。
被爆を語らず
6月に刊行された中学生以上向けの「Garden 8月9日の父をさがして」(童心社)。長崎出身の主人公が、12歳だった父の足跡をたどっていく物語だ。
物語のモデルは、担当編集者で長崎市出身の橋口英二郎さん(60)と橋口さんの父。父の死後、被爆者健康手帳が見つかった。父は生前、被爆していたことを子どもたちに語らなかった。ただ、「学校の掃除当番をさぼって、疎開先に帰る列車に乗れたので、助かった」とだけ聞いていた。
現場をたどる旅へ
その話を聞いた森越さんは直感で「さぼったのには訳があるのでは」と思った。2016年夏から長崎を訪れ、取材を進めた。
手がかりは被爆者健康手帳…