Smiley face
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(12日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 富山商-東海大相模)

 富山商の新井丈弐偉(じょにい)は小麦色の肌がよく似合う、海の男だ。

 桑田佳祐さんのヒット曲「波乗りジョニー」が名前の由来。みんなに覚えてもらえるから、結構気に入っている。

 富山市の自宅から道路を渡ってすぐのところに、富山湾がある。幼稚園のころから、サーフィン好きの父親に連れられて遊んだ。

 最初は「怖かった」。コツは乗れる波を見極め、勇気を持って飛び込むこと。すぐにサーフボードの上に立つことができた。

 小学生のころは極真空手の大会で負け知らず。足も速くて運動神経抜群なのだけど、肝心の野球は「あんまりなんです」。

 でも、8年間続けている。原点は小学6年生のときの、なんでもない練習試合。思いっきりバットを振ったら、校舎に直撃する人生初ホームランになった。

 うれしかったのは結果が出たことだけじゃなくて、自分以上に笑顔の仲間たちとハイタッチしたこと。「団体スポーツっていいな」

 高校で公式戦出場はなし。夏の富山大会ではメンバーから外れた。けれども腐らず、帰宅後の素振りは欠かさなかった。練習では誰よりも声を出した。

 そんな姿勢が評価され、甲子園大会でのベンチ入りを勝ち取った。開会式の入場行進では「イチ、ニイ!」と音頭をとった。仲間から「ここはジョニーでしょ」と背中を押された。

 けがをしたら良くないから、しばらくサーフィンは封印している。野球とは全然違うけれど、ちょっとした共通点もある。

 「良い波を逃さないこと。野球で言えば、チャンスで一本を出すこと」

 12日の2回戦、全国制覇経験のある東海大相模を相手に「1番・左翼手」として先発メンバーに抜擢された。「チームを勢いに乗せる」と第1、2打席の8球全てをスイングしたが、いずれも三振に倒れた。

 五回終了後のクーリングタイム時点で両足をふくらはぎがつっていて、自ら交代を名乗り出た。「最後まで戦えなかった。すごい悔しい」

 試合で“ビッグウェーブ”は起こせなかったが、全力でプレーする姿は示せたと思う。「最初にベンチに入れていなくても、諦めずにやれば甲子園でスタメンで出られるんだって体現できたことはよかったのかな」(大宮慎次朗)

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