3月初旬の夕方、上海市内の支局でその日の仕事を片付けると、急いで荷物をまとめて車で高速鉄道の上海虹橋駅に向かった。出張先の北京まで、午後6時52分発の「G28号」の切符をアプリで購入していた。
日本の新幹線のような車両が採用されている高速鉄道網は、いまや中国各地に張り巡らされている。その中でも、G28号は中国のSNS上でちょっとした「伝説」と言われている。
【連載】新語・流行語から探る中国
受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。
東京―鹿児島中央に匹敵する約1300キロを4時間26分で駆け抜ける。途中の停車駅は蘇州北と南京南の2駅だけ。「伝説」と言われるゆえんはその速さもさることながら、北京南駅に午後11時18分着という絶妙な到着時刻にある。
この時間なら北京市の各地に向かう地下鉄に乗り換えられるため、ぎりぎりまで仕事をして北京の出張先に向かう、または自宅に帰るというビジネスマンが多く乗り込む。そのため、車内は独特の雰囲気が醸し出されている。
「班味(パンウェイ)」
中国語の「班」は職場を意味する。出勤するのは「上班(シャンパン)」、仕事を終えて帰宅するのは「下班(シアパン)」だ。国営の中国国際テレビ(CGTN)の日本語版は班味を「くたびれた勤め人感」と訳しているが、少しこなれない。もっと言えば、「『社畜』がまとう雰囲気」だろうか。G28号は班味が特に濃いのだという。
ある動物に例えて、「社畜」のような働き方を皮肉ったり、自虐に使ったりする言葉も生まれています。どんな言葉でしょうか。
車内にスタバも
改札口に着くと、うわさ通り…