滋賀県いじめ再調査委員会は4月、県内の私立中学校で2021年に起きたいじめ事案について、「重大事態」と認定した。学校の調査と並行して三日月大造知事が再調査委員会の立ち上げに踏み切る異例の経緯をたどった。重大事態の調査をめぐる学校や教育委員会の対応にはどんな課題があるのか。各地で調査委員を務める、県いじめ再調査委員長の春日井敏之・立命館大学名誉教授に聞いた。

 ――最近のいじめの傾向は。

 1対1の関係からいじめが起きています。これまでは1人対集団、あるいは1人対学級ぐるみでした。いじめられる子▽いじめる子▽観衆▽見て見ぬふりをする傍観者という「いじめの4層構造」もありました。けれども、特にコロナ禍以降、子どもたちは1対1の関係を求め、その中に居場所を見つけようとしています。そこで関係がうまく結べず、友達の取り合いが起きるなど、トラブルが多発しています。以前と違うため、先生にはいじめというより「1対1のトラブル」と見えてしまい、認知しにくくなっています。

 ――「いじめ」かどうか、難しい判断を迫られる教職員や学校はどう対応すればいいのでしょうか。

 悪意のない何げない一言で傷つけられた子どもの心身の苦痛が時に深刻になり、トラウマとなって将来に大きな影響を与えることは過去の事例が示しています。いじめ防止法(いじめ防止対策推進法)では「児童等が心身の苦痛を感じているもの」と、いじめを広く定義しています。子どもが「しんどい」と訴えたら、まず「いじめ」と認知することが基本です。トラブルの段階での丁寧な対応がより求められています。子ども同士の関係に悩み先生に訴えたのに「気のせいではないか」「お互い様ではないか」と言われ、「聴いてもらえなかった」となれば、子どものしんどさが倍になります。

 ――いじめ防止法で規定された「重大事態」となったケースが増えています。

 2022年度の文部科学省の調査では、重大事態は前年度から3割以上増え923件と過去最多だった。そのうち約4割では、重大な被害を把握する前にいじめとすら認知されていなかった。依然として、早期の認知と対応に課題があるのです。

 ――いじめの認知や重大事態の調査は学校現場の負担になるとの声も根強くあります。

早期の対応求める訳

 いじめとして認知すると、学…

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