震災当時、東京電力職員だった女性は昨年、東日本大震災と原発事故からの復興支援のために誕生したサッカーJ2いわきFCを運営する「いわきスポーツクラブ」(いわきSC)に転職した。スタジアムを訪れた際に見たある光景が転職のきっかけだった。
吉崎沙紀さん(36)はいわきSCで地域推進担当として、ファンクラブの会報作成を担当する傍ら、チームのスポンサーに双葉郡内を案内することもある。
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第一原発が立地する福島県大熊町で生まれ、隣の双葉町にある県立双葉高校(現在は休校)を卒業し、東電に入社した。原発は小学生の社会科見学などでよく訪れる場所だった。東電への入社が決まると、両親は喜んでくれたという。
入社後は第一原発3、4号機の運転員を務め、原発構内で知り合った夫と結婚。震災当時は長女の育休中だった。
当時住んでいた町内のアパートには、東電社員が多く生活していた。「旦那と連絡がつかない」「原発周辺の線量が上がっている」「避難しなければ行けないのか」――。話を聞き「そんなにまずい状況なのか」と驚いた。
翌日、自家用車で親戚が暮らす猪苗代町に避難。そこで、第一原発の水素爆発をテレビで見た。「構内には知り合いばかりいるので、信じられなかった」。知人にメールを送ったが返ってこなかった。
作業着で歩くと、地元住民から怒鳴られた
2013年4月に職場復帰し…