北九州・魚部の発行する雑誌「ぎょぶる」。ネット通販もしている

記者コラム「多事奏論」 くらし科学医療部(大阪)記者・長沢美津子

 夏の土用が近づいて、今年も百貨店やスーパーの広告では「暑さを乗り切る」「季節の風物詩」といった言葉とウナギのかば焼きが、ピカピカ光っている。

 その明るさに、胸はざわざわと騒ぐ。

 絶滅のおそれから、環境省と国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギをレッドリストに載せて10年あまり。自分の価値観で食べる・食べないを決める消費者の声を聞き、丑(うし)の日の食品ロスを防ぐ流通の取り組みもあるが、食卓のウナギを輸入に頼る状況は変わらない。国際取引の規制が議論されるなか、「食文化だから」と胸をはれるだろうか。

 そもそもは、ウナギという生き物が列島に生息してくれたおかげ。古代から人が利用するなかに、文化が育った。江戸期にしょうゆとみりんに出会ったことは、ウナギにすれば災難、人々には口福をもたらすが、かば焼き職人の技も、身近に生き物の豊かな河川があって磨かれたはずだ。沼や田んぼの広がっていた内陸に、川魚料理の老舗が残る。店の看板に書かれているのはウナギだけでない。ドジョウもフナも、貝類も土地の味。そしてどれも減少の道をたどる。

 食べる魚を、生き物として見…

共有
Exit mobile version