中島京子 お茶うけに
「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。
この原稿をニューヨークのホテルで書いています。
ニューヨークに来るのは15年ぶり。仕事ではなくて、従兄(いとこ)の息子の結婚式に参列するため。従兄はもう30年以上前に渡米し、アメリカ人と結婚していて、従兄の息子はカリフォルニアで生まれ育った。東海岸の大学に進学するために親元を離れ、仕事を見つけ、結婚相手も見つけ、ニューヨークのブルックリンに住んでいる。お相手は生まれも育ちもニューヨークだそうで、ふたりは地元ブルックリンのプロスペクト・パークにある植物園で結婚式を挙げた。
植物園にあるドーム形の施設(全面ガラス張りで温室のような作り)で式は行われた。いわゆる人前式というのか、牧師のような役割は幼なじみが務め、誓いの言葉、指輪交換、新郎新婦がそれぞれへの手紙を読み上げて、ウェディングキスと続く、一連の儀式があり、列席者は別室へ移動して、リフレッシュメントをつまみながら一息。そして、セッティングが変わり、丸テーブルが並べられたドーム形の施設に再入場。テーブル席は室内の左右に分けて設(しつら)えられて、真ん中のフロアが大きく空いている。ここから、日本でいう「披露宴」みたいなものが始まったのだが。
「レイディーズ&ジェントルメ…