V字形にえぐられた登山道=2019年10月26日、大雪山山守隊提供
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 近年、頻発する豪雨災害や管理不足で登山道が傷む中、「近自然工法」という山岳管理の発想が注目を集めている。昨年6月、山梨県内の登山家らと一緒に日本山岳歩道協会を立ち上げ、技術の普及に努める、北海道の大雪山山守隊、岡崎哲三さん(49)に、山の現状と改善案を聞いた。

生態系の底辺にいる生き物の環境を回復

 ――全国で荒廃する山が問題になっています。

 利用者が踏んで裸地になった登山道に雨水が集中して流れることで、土壌が削られる。登山者は歩きにくくなった登山道を迂回して登るので、周辺の土壌も削られる。そうした負の連鎖から、人の背丈以上の深さでV字形にえぐられた登山道は多く、管理する自治体も、対応に苦しんでいます。

 管理不足に加え、最近は、数十年に一度の豪雨が頻繁に起こるため、山の荒廃は加速し、貴重な植生も一緒になって失われています。例えば、大雪山の表土は、高山植物が数百年をかけ、数センチを覆いますが、一度失われてしまえば、回復にまた数百年かかります。

 ――「近自然工法」とはどのような技術ですか。

 近自然工法は技術のことと誤解されますが、生態系の底辺にいる生き物の住める環境を回復する、という考え方です。登山道を修復する時は、岩や丸太、土砂などのあるべき位置を考え、雨水が流れても人が歩いても生態系が維持されるよう工夫します。

植生にとって最もよい修復方法を考える

 ――どうしたらいいですか。

 まずは、よく山を観察して…

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