今月9日、日曜日の午後。水を張った鍋に昆布を沈め、別の鍋で輪切りにした大根を下ゆでした。その後、米首都ワシントン近郊の自宅から、車を30分走らせ、最近できた日本食品のスーパーへ。ちくわ、こんにゃく、さつまあげなど、おでんの具材を次々にカートに放り込む。
- 【視点】トランプ時代の「尊厳」の話をしよう サンデル教授がみる病根と希望
ちゃんとした夕飯をつくるのはいつ以来だろうか。帰り道、ハンドルを握りながらふと思った。
ワシントン駐在記者の私は、米国の経済政策の取材を担当している。トランプ大統領が1月20日に就任して以来の1カ月間は、人生で最も多忙を極めた期間だった。
思い返せば、波乱は就任初日から始まった。
2月1日に、カナダとメキシコに25%の関税をかける――。トランプ氏は早速、記者団にこうぶち上げた。「脅しで、実行はない」。そんな見立てもあった。だが、第1次政権の元貿易交渉官が私に語った言葉が不意によみがえった。
「彼は有言実行の男だ」
2月1日、トランプ氏はこの…