夢洲から
大阪・関西万博のガスパビリオンの近くで、「もう1回やる!」とねだる男の子を見かけた。5歳くらいだろうか。
ガスパビリオンには、仮想と現実を組み合わせた空間でおばけに変身し、ゲームのように環境問題を学ぶ仕掛けがある。おねだりは楽しさの裏返し。困り顔のお母さんに申し訳ないながら、ほほえましく思った。
私も報道公開の取材で体験した。拡張現実の空間に浮かぶお菓子を集めていると……。環境のことを考えないと、どうなってしまうのかがわかり、二酸化炭素と水素からガスをつくる新しい技術も紹介されていた。
体験しながら思い出していたのは、幼い頃に家の近所にあった科学館のことだ。鉄板に敷かれた砂が音にあわせて模様を描く。落としたボールが複雑なコースターを転がっていく。展示された実験装置を見るのがおもしろく、入り浸っていた。
万博の会場には、知らない技術の話があふれていてわくわくする。子どもたちにとっては、なおさらだろう。
「もう1回!」とせがんでいた男の子もいつか、おばけに変身した日のことを思い出すだろうか。環境に優しい大人にも、なってくれるかな。
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。