香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。

木戸龍介「Inner Light-Floating Houseboat of Setouchi-」

 高松港(高松市)までを結んだ定期航路が2021年春に休止した小豆島・草壁港。その近くに、全長約12メートルの青い「家船(えぶね)」が展示されている。

木戸龍介さんの作品「Inner Light-Floating Houseboat of Setouchi-」
=2025年4月16日午後1時33分、香川県小豆島町草壁本町、渡辺杏果撮影

 かつて瀬戸内海に存在した船上生活者が暮らしたものだ。2020年に広島県尾道市の元漁師から、瀬戸内国際芸術祭実行委員会へ寄贈され、作家の木戸龍介さんに制作が任された。

 塗装の一部ははがされ、木がむき出しになった船体には、先の細い電動工具で細かな穴が空けられている。無数の穴は、ウイルスやがん細胞をイメージして彫り込んだという。

電動工具を使って少しずつ彫刻していく作家の木戸龍介さん=2025年4月16日午後1時31分、香川県小豆島町草壁本町、渡辺杏果撮影

 木戸さんは「ウイルスが浸食することで、船の機能を奪って光や空気が入り込む。すると、活動を止めた家船が再び呼吸を始める」。

 穴の隙間に目を近づけると、船の心臓部であるエンジンも見える。ほこりをかぶったエンジンは、この船が漂い続けた海よりも深い青色をしていた。

家船に彫刻した穴からは、エンジンをのぞき見ることができる=2025年4月16日午後1時28分、香川県小豆島町草壁本町、渡辺杏果撮影

 夜には、内側からライトアップされるという。

小豆島(小豆島町) 【アクセス】

 島内の坂手港、池田港、土庄港、福田港からバスが利用できる。坂手港からは臨時バスで12分。

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