中国・上海の劇団による舞劇「朱鷺(とき)」の来日公演が全国各地で開かれている。日中友好の象徴であるトキを題材とし、外交の表舞台にも登場したことがある作品。8年ぶりの来日公演をきっかけに両国間の交流が深まればと、関係者の期待は高まっている。
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舞劇とは、バレエや民族舞踊などを組み合わせ、セリフを使わずに物語を展開する中国の舞踊劇。上海歌舞団の「朱鷺」は、数千年にわたるトキと人間の関係性を総勢65人の団員で描く作品だ。
トキはかつて東アジア一帯に生息していたが、環境破壊や乱獲で激減した。日中ともに保護活動に取り組み、1998年に来日した江沢民国家主席(当時)が贈呈を約束。翌99年に2羽のつがいが日本に贈られた。2003年に日本のトキが絶滅した後も、環境省はこの2羽を軸に繁殖を進めてきた。
2年半ぶりの首脳会談で
パンダと並んで、日中友好の象徴となっているトキ。これを題材にした舞劇もまた、外交の表舞台に登場したことがある。
2014年、当時の安倍晋三首相が国家主席に就任した習近平(シーチンピン)氏との初めての会談に臨む前、東京であった「朱鷺」のプレビュー公演を鑑賞。外務省によると、会談で安倍氏は「こうした文化交流は重要であり、自分としても一層促進したい」と習氏に語りかけたという。
当時は尖閣諸島や靖国参拝をめぐる問題などで2年半にわたって首脳会談が行われておらず、両国が関係改善を模索していた。
今回も両国に関係改善の兆しが見られる中での公演となり、関係者の期待は高い。上海歌舞団の王延団長は「長い間、心待ちにしてくれていたファンもいた。言葉を必要としない舞劇で、中国と日本との相互理解を深める良い機会になることを願っています」と話している。
4月20日までに、トキの野生復帰の取り組みが行われている新潟県など32都市で55回の公演が予定されている。