病との闘い、家族との死別、子どもの不登校……。そんな経験や体験があるいろいろな人が、同じ立場にある人とオンラインで対話する「未来アドバイザー~あなたの不安を解決します~」というサービスが始まった(https://future40min.base.shop/)。

 サービスは1月9日にスタート。現在、20~60代の36人がアドバイザーとなっている。

未来アドバイザーのホームページ。実際の顔ではなくアバターで表示されている。下の並びの中央がマルママさん

 ホームページには、本人を模したアバターやプロフィルが並ぶ。がんやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性、うつ病、中絶、不妊、子の不登校、性的指向など内容は様々。配偶者の不倫などもある。

 選んでクリックすると、「私が話せること」など詳しい内容が書かれたページへ。そこから申し込む。料金は40分7700円(税込み)だ。

 大阪市鶴見区で地域新聞「ローカル通信」を発行している吉村大作さん(44)が始めた。「あんたは人の役に立てる子や」と、子どものころから母に言い聞かされた言葉が根幹にあるといい、これまでウクライナから避難した人や、能登半島地震で被害に遭った輪島塗を支援するなどしている。

「先に経験した人間として役に立ちたい」

 2024年にはユーチューブチャンネル「ほっとTV~闘病家族、心の物語~」を開設し、病と闘う人たちの姿を記録してきた。その取材先を探す段階で、「メディアには出たくないけど、先に経験した人間として、同じ境遇にある人の役に立ちたい」と考えている人が多くいると気づいた。これが今回のサービスにつながった。

 「未来アドバイザー」には面接をして、経験の中身やコミュニケーション能力を確認している。

 アドバイザーたちも現在進行形で悩みの渦中にいる。それでも自分の経験を振り返り、同じ悩みや苦しみを抱える人たちの力になりたいと思っている。

 吉村さんは「未来アドバイザーを通じて、一人でも多くの人の不安を小さくして、アドバイザーと相談者が互いに『いい時間を過ごせた』と思ってもらえれば」と話す。

わからぬ余命のなか、誰かの力になれたら

 アドバイザーの一人は、どれだけ残っているのかわからない余命のなかで、誰かの力になれたらと参加を決めた。

愛犬を抱くマルママさん。取材を受けたのも、自分が生きた証しを記事という形で娘たちに残したいと思ったからだ=2025年1月20日、大阪府内、川村さくら撮影

 アドバイザー名「マルママ」の大阪府内の女性(44)は、がんになる可能性が高い「異形成」が子宮頸(けい)部に見つかったり、膣(ちつ)にがんができたりして、子宮の摘出や膣壁切除といった手術を相次いで経験した。23年には、おなかの中にがんが散らばった「腹膜播種(はしゅ)」が判明した。

 数年なのか、それとも、数カ月なのか――。残った時間を考えては、泣いた。

 そんなとき、SNSで出会った仲間たちの存在が大きかった。抗がん剤治療でどんな副作用が出たか。お勧めの対策やグッズ。いつもアドバイスと励ましの言葉をくれた。

 緩和ケアの専門医師のもとへも通った。そのうち、うじうじしていても時間がもったいないと考えるようになった。

娘に、お母さんは最後まで輝いて生きていたと

 ブログで病気について発信していたところ、吉村さんから声がかかった。自分はカウンセリングの専門家ではない。だけど当事者だからこそわかる苦悩もあるし、できるアドバイスもある。

 抗がん剤治療を続けている。「私って病気のデパートみたいなもんなんです。だからこそ誰かの不安を取り除けるかもしれないし、相談できる相手がいなくて孤立している人の力にもなりたい」と話す。

 今できることは、日々を悔いなく過ごすことだと思っている。そして自分が救われたように、誰かを救いたい。それから2人の娘に、お母さんは最後まで輝いて生きていたと覚えていてほしい。

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