漫画家うえはらけいたさん(36)の経歴は、ちょっと変わっている。
大学卒業後、広告会社の博報堂に入ってコピーライターに。
5年間勤めた後、多摩美術大に入り直してグラフィックデザインを学んだ。
会社員デザイナーとして働きながら漫画を描き始め、コロナ禍の2020年、32歳で専業漫画家になった。
ウェブで発表した作品のうち「コロナが明けたらしたいこと」と「ゾワワの神様」は書籍化もされている。
X(旧ツイッター)のプロフィル欄には、こんな一文が書かれている。
「人生がどこからでも軌道修正できるってことをみんなで証明しましょ!」
だが、常に前向きだったかといえば、そんなことはない。
デザイナーをやめて専業漫画家になったころ、焦燥感はピークに達していた。
「自分は何の代表作も持ち合わせていない自称漫画家では?」
漫画の仕事を得るためには、人脈作りから始めなければならない。
そんなことを思って、会社員時代の同期に連絡をとったり、面識のないインフルエンサーのSNSにリプライを送ったりもした。
彼女から言われた言葉
そんなある日、博報堂時代の同期から「今からイベントに来られる?」と誘いがあった。
この日は休日で、付き合っていた彼女とデートの予定が入っていた。
仕事につなげたくて同期の誘いを優先し、彼女にキャンセルの連絡をした。
ところがその後、同期から「人数が集まっちゃったのでやっぱりナシで」と連絡が。
「迷って決めたのに……結局どっちもダメにしてしまった」
ふがいなさを感じながら彼女にもう一度連絡して、詳しく事情を説明した。
すると彼女は、こんな言葉で…