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未来の課題解決に向けたアイデアを募った「未来事業イノベーションアワード」でプレゼンテーションをする千原顕勝さん=2024年10月25日、東京都中央区八重洲2丁目

 高校通学に使っていた路線バスが廃止の危機にさらされたのをきっかけに、縮小する公共交通について研究する東大生がいる。住み慣れた地域で、不便なく暮らし続けるには。課題を解決するアイデアも考え、発信をしている。

自由研究でバス会社へ問い合わせ

 2021年春。岡山市に住んでいた千原顕勝さん(19)は配布されたチラシを見て驚いた。

 自宅最寄りのバス停から岡山駅に行く路線バスが、運行廃止を検討されている内容だった。自宅から岡山駅まではバスで約20分。新幹線を利用して神戸市東灘区の灘高校に通っていた千原さんにとって、欠かせない通学手段だ。

 「これから朝、どうしよう」

 各地のバス会社が路線の廃止や減便を決めたニュースは知っていたが、自らの生活に影響が及ぶのは初めて。チラシには、新型コロナウイルスの影響や競合他社の進出で利用客が減り、黒字を維持できなくなったと書かれていた。

 結果的に、高校在学中に路線の廃止はなかったが、地域交通を支えるバス会社に関心を持つようになった。高校1年の自由研究のテーマに選び、国土交通省の資料を調べたり、実際にバス会社や自治体などへ問い合わせたりした。

浮かんだ解決のアイデア

 1970年前後には年間約100億人いた乗り合いバス利用者は、自動車の普及などもあり、コロナ禍前の2018年には約6割減っていた。内訳を見ると、大きく減少したのは大都市圏以外の地方。そうした地域の事業者の経常収支は赤字で、財政上の問題を抱えていた。

連載「8がけ社会 通学異変」

 運転手不足で路線バスの撤退が相次ぎ、都市部でも子どもたちの通学に影響が出始めています。2040年には現役世代が20年の8割になる「8がけ社会」になり、運転手の確保はさらに難しくなるかもしれません。少子化で学校の統廃合が進むなかで、この問題に向き合います。

 高齢化に伴い、運転免許を返納する住民が増えれば、地域交通の必要性は再び増える。利便性が低下すれば、住民は地域を離れ、コミュニティーにも影響を与えかねない。交通網の維持は、地域の課題と密接に関わっていた。

 課題をまとめるなかで、解決…

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