駐在所のお巡りさんの妻が着ぐるみのキャラクターを作った。モデルは愛犬のミニチュアダックスフント。名前は「くうちゃん」。愛らしい姿が人気を呼び、防犯イベントに引っ張りだこだ。
京都府綾部市で7月21日、綾部署などが開いた「夏の交通安全・防犯フェア」があった。警察官の青い制服の格好をしたくうちゃんがノリノリで踊っていた。
演奏するのは地元の中学生。女性バンド「プリンセス プリンセス」の「Diamonds」やキャンディーズの「年下の男の子」のリズムに合わせ、くうちゃんが体を揺らした。子どもたちも手を振って大はしゃぎ。くうちゃんが会場を歩けば子どもたちに囲まれ、写真と握手を求められた。
くうちゃんの生みの親、大坂明美さん(52)は「防犯意識を高めるのが目的です。そのためにキャラが浸透しているのはいいこと」と話す。
夫の智哉巡査部長(52)は3年前から綾部市北部の物部駐在所に勤めている。駐在が決まり、明美さんは看護師を辞めた。引っ越して1カ月がたったころ、智哉さんが近くの保育園から安全教室を開いてほしいと頼まれた。
子どもたちに智哉さんが話すだけでは印象に残らないのではないか。そう考えた明美さんは、ネコをかたどった棒人形を作った。
智哉さんがこの棒人形を使って子どもたちに説明すると「反応が全然違った」。もっとユニークな防犯啓発を、と試行錯誤を繰り返した。
2年前の夏、綾部市は台風7号の影響で大きな被害に遭った。地域の人たちを元気づけたい。あわせて防犯啓発の意識も高めてもらいたい。その方法として着ぐるみを思いついた。
どんな着ぐるみにしようか。明美さんが自宅で考えていると、愛犬のミニチュアダックスフント「くうた」と目が合った。モデルが決まった。
1週間後にある京都府警のイベントに間に合わせるため、急いで初代のくうちゃんを作った。
しかし、不評だった。細長い顔が「馬みたい」と言われた。「もっと丸っこく」。愛されるくうちゃんを目指して改良した。
頭はアルミ製の保温マットで作り、かぶったときに安定するように頭の中にヘルメットをつけた。鼻は、100円ショップで買ってきた台所の三角コーナーを使った。設計図はない。「同じものは二度と作れません」と明美さん。
明美さんがかぶった。愛犬のくうたがみんなの安心・安全のために進化し、くうちゃんとなって交通安全や特殊詐欺の被害防止を呼びかけるという設定。2代目の評判は良かった。
活動するうちに高齢者から「くうちゃんが教えてくれたから詐欺だとわかった」という声が寄せられた。地域の運動会にも呼ばれ、徒競走で1位をとったこともある。
くうちゃんの評判は駐在所の管轄エリアを超え、綾部市内各地の防犯イベントに呼ばれるようになった。内藤知則交通課長は「老若男女問わず、くうちゃんが来るよと言うと人が集まる」と話す。
京都府警は7月8日、地域の防犯に貢献したとして感謝状を明美さんに贈った。上田博之地域部長は「(夫妻が)二人三脚で活動してくれているのはありがたい」とたたえた。
明美さんは「安全・防犯のためにどのように伝えたら印象に残るかを考えた結果です。今後も印象に残る活動をしていきたい」と話す。