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東邦大医療センター佐倉病院の集中治療室(ICU)=2025年1月30日、千葉県佐倉市、同院提供

 コロナ禍をほうふつとさせる状況だった。

 「うちの患者さんを受けてくれないか」

 今年1月、千葉県佐倉市の東邦大医療センター佐倉病院に、近隣のクリニックから次々と患者の受け入れ要請が入った。

 こうしたSOSは普段は平均で月80件ほど。しかし、同月は120件ペースにまで急増した。満床のため、4割は断らざるを得なかった。救急隊からの受け入れ要請も、6割近くを断らなくてはならない異常事態となっていた。

 近くには高齢化が進むニュータウンがある。近年は高齢者の骨折などで入院する人が増え、冬場はもともと心不全や脳卒中の患者も多い。そこにインフルエンザの大流行が襲った。高齢になると、多くの人が持病を抱え、感染症にかかれば入院が必要なケースも増える。

 周辺の病院も逼迫(ひっぱく)し、30カ所の医療機関に受け入れを断られた救急患者も運び込まれた。「コロナ禍で最もひどい時以来だ」と、鈴木啓悦院長は嘆息する。

 佐倉病院が昨年12月と今年1月の2カ月で受け入れたインフルエンザの入院患者は285人。新型コロナウイルスの入院患者も251人に上った。多くが高齢者だ。

 入院患者の増加は、重症者の受け入れにも影響する。

 重篤な患者や大きな手術を受けた患者が入る集中治療室(ICU)のベッドは6床あるが、「コロナ禍では通常の診療に制限をかけていた分、今回の方がベッドは埋まっている」と鈴木院長は話す。

 佐倉病院の周辺地域では、退院に向けた医療やリハビリを提供する回復期の病院が少ない。その病院まで満床になると、佐倉病院で症状が軽くなった患者の転院先がなくなる。結果として、佐倉病院では入院期間が延び、ICUのベッドも空かず、心不全など重症者の受け入れを断ることもあった。

 鈴木院長は「急激な高齢化に医療が追いついていない。さらに高齢化が進んだ状況で感染症が流行すれば、コロナ禍と同じように、通常の医療を制限しないといけない状況になるのではないか」と危機感を募らせる。

 国内で新型コロナの流行が始まり、5年を迎えた。この間にも高齢化は目に見えて進んでいる。佐倉市では昨年12月までの5年間で75歳以上の人は約7千人増え、19.7%を占める。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本全体でも75歳以上の割合は2040年に19.7%に達する。

 コロナ禍を受けて、マスクをはじめとする感染防護具の備え、検査体制、医療機関の連携など、多くの面で感染症への対応能力は強まった。しかし、この冬のインフルエンザの流行でも、地域によっては医療が逼迫した。

 患者が急増した際、特に重症者の受け入れ先が不足する構造は、今も変わっていない。新たなパンデミック(感染症の大流行)が想定されるなか、この「弱点」を克服できていない。

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