「令和の米騒動」で、日本酒の原料になる酒米(さかまい)も2025年産の高騰が避けられない情勢だ。全国の酒蔵が、ユネスコの無形文化遺産登録を追い風にしたい気持ちとは裏腹に、小売価格に転嫁しても受け入れられるか、そもそも十分な原料を確保できるのか、危機感を募らせている。
東飯田酒造店(長野市篠ノ井)は創業160年。北アルプスの槍ケ岳を源流とする犀川が長野盆地に注ぐあたりに蔵を構える。新緑がまぶしいこの時期は酒造を終え、営業へ力点を移すころだ。杜氏(とうじ)で常務取締役の飯田淳さん(40)によると、24年産米を使った日本酒「本老(もとおい)の松」のできばえは上々だ。納入先の評判もよいという。
ただし今年はタイミングを見て小売価格を上げざるを得ないと考えている。原料費の上昇がおもな理由だ。
東飯田酒造店は県産米にこだわり酒米は「美山錦」をおもに使う。値上げはコロナ禍前に実施して以来だ。主食用米と違って日本酒は嗜好(しこう)品だ。小刻みな値上げをしづらい。飯田さんは「コメだけでなく、瓶、ふた、人件費、燃料、すべての値段が上がっている」と悩ましげだ。
酒米は、酒造りへの思いを共有する契約農家のほか、県内約80の酒蔵が加盟する長野県酒造組合から仕入れている。同組合は毎年、JA全農長野から「美山錦」を購入する。その購入価格は、主食用米より高く設定されるのが通例だ。酒米は栽培に手間がかかり、単位面積あたりの収量も少ない。主食用米のほうがもうかるなら作ってもらえない。生産者が割に合わない、とならないよう、バランスをみて価格は決まるという。
主食用米が酒米上回る逆転現象
農林水産省によると、酒米で…