それぞれの最終楽章 また会う日まで!(8)
朝日新聞編集委員 中村俊介
僕は信仰心も薄いし、霊感もない。ただ、ひょっとしてこれって奇跡かも、と思えるような巡り合わせにいくつも出会った。
娘の死を機に妻がカウンセリングに通っていた病院が、ホスピスとして全国的に有名なことを知ったのはがんの宣告後だ。彼女もまさか、そこが自分の終(つい)のすみかになるとは予想していなかっただろう。けれどそのおかげで入院もスムーズだった。なんだか娘の引き合わせのような気がする。
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病室は3階で、窓からはソメイヨシノの並木が見おろせた。花が咲いたらきれいだろうな。でもおそらく3月末まではもたないだろうから、満開の桜は無理だな。僕はあきらめていた。
ところが、端っこにある小さ…